コラム 3
「24時間、365日、いつでも連絡下さい」
~ カンボジアの投資環境整備支援 ~
CDCスタッフと(左端)(写真提供:今村裕二)
カンボジアは、2001年以降、平均で約8%の高い経済成長率を記録しており、内戦、復興を経て、本格的な経済開発が始まっています。日本は、カンボジアに対し、これまで道路・港湾、電力、通信といった基礎的な経済インフラの整備、農業、上水道、保健、医療、教育など多くの分野で支援してきました。そして、今までの協力を続ける一方、2003年に開発効果のある外国からの直接投資に向けたカンボジアの投資法が改正されると、新たに民間セクターでも援助を始めました。
カンボジアの投資環境整備への日本の支援の一例として、同国唯一の外洋に面した国際港であるシハヌークビル港に対する円借款*1があります。シハヌークビル港の経済特別区の整備は2009年から進められており、2011年度中の完成を控え、日系企業の進出が期待されています。
JICAの投資環境アドバイザーとして、2009年10月からカンボジア開発評議会(CDC)に設置された「ジャパンデスク」に派遣されている今村裕二(いまむらゆうじ)専門家は、カンボジアへの進出に関心のある日系企業に対し、様々なアドバイスをしています。今村さんは、「何か必要な事があれば、24時間、365日体制なので、いつでもご連絡下さい。」とメールアドレスと携帯番号を知らせています。
月曜から金曜の大半は、カンボジアを訪れる日系企業へのプレゼンテーションや相談に費やす今村さんは、そのほかに、休日返上で日系企業を地方の経済特区に案内するなど、仕事は多忙を極めています。必要以上のサービスではないかといわれても、「この時期のカンボジアへの投資企業には、まだまだ、『官』が支援を行わなければならず、手厚く行っていきたい。」と譲りません。また、日本や近隣国でのカンボジアへの投資セミナーでは、政治経済や社会状況のほか、進出した日系企業がカンボジアに駐在員を置く場合を考え、今村さんが自身の足で集めた情報に基づいた現地の生活を紹介し、講義内容は日系企業に好評です。
また、今では活気のあるジャパンデスクですが、今村さんが派遣された当初は、夕方のオフィスにスタッフが誰もいなくなるなど、あまり活用されていませんでした。この状況に対して、「投資を誘致するとカンボジアはどう変わるのか?投資が進んでジャパンデスクに頻繁に人が出入りするようにするために、我々ができることは何か?」という意識をカンボジアのスタッフと分かち合うことが必要と今村さんは感じました。そこで、手始めに、みんなが帰ったオフィスで一人、来客用のテーブルを磨き、ハイビスカスの鉢植えをオフィスの入口に置きました。しばらくすると、次第にスタッフがそれぞれ机の回りの整理をし、また、自発的に会議室の模様替えを行うようになりました。スタッフと投資相談に来る人たちとの打ち合わせが終日続く光景が見られる、今日のジャパンデスクの始まりです。
カンボジアは、「中国プラスワン」、「ベトナムプラスワン」(中国、ベトナムに次ぐ有望な投資先としてのカンボジアを端的に表現するいい方)として注目を浴びています。
「現在のカンボジアの状況は、私が商社員として駐在していたころのベトナムの経済成長初期によく似ています。この数年間がカンボジアの経済発展にとって勝負の年です。」と語る今村さんです。
*1 : シハヌークビル港経済特別区開発計画
日系企業に投資の説明をする今村さん(スクリーン近く左側)(写真提供:今村裕二)