Keyword 3 経済外交の推進へのODAの活用
日本は政府開発援助(ODA)を通じて様々な国際貢献を行ってきました。こうした国際協力を今後も積極的に行っていくためにも、日本を支える土台である経済を強化することが一層重要になってきています。
前原外務大臣が2011 年1月の第177 回国会における外交演説で明らかにしたとおり、ODA については「ODAのあり方に関する検討」を踏まえ、貧困削減(MDGs達成への貢献)、平和への投資、持続的な経済成長の後押しを引き続き重点分野とするとともに、経済外交の推進へのODAの積極的活用を特に重視していきます。国際社会、開発途上国および日本のすべてに裨益するODA を推進していく考えです。
経済外交の大きな課題の一つが、資源・エネルギー・食料の安定供給の確保であり、レアアースを含む鉱物・エネルギー資源保有国や食料輸出国との間で戦略的に関係強化を図ることが重要な課題となっています。この観点からも、ODAなどの外交ツールを活用し、官民連携の下、資源保有国などのインフラをはじめとする社会経済開発を積極的に支援し、二国間関係を強化します。
また、インフラの海外展開支援も経済外交の大きな柱の一つです。これまでも、日本は、ODAと民間企業との連携を進めるべく、円借款に関する本邦技術活用条件(STEP *1)や、民間企業による官民連携案件の提案受付制度の導入などの施策を実施してきました。STEP は、日本の優れた技術やノウハウを活用し、開発途上国への技術移転を通じて日本の「顔の見える援助」を促進することを目指して2002 年に導入された制度です。2009 年度は、日本はSTEP の円借款として、インドにおける貨物専用鉄道建設計画、ベトナムにおける国際空港旅客ターミナルビル建設事業、パプアニューギニアにおける下水道設備事業など計6件の事業を実施しました。日本は、この制度の下、その優れた技術やノウハウを活用して開発途上国の開発を支援するとともに、インフラの海外展開も推進してきています。
さらに2010 年度はJICA にて民間提案型の調査制度を導入しました。これは開発途上国の開発課題の解決に民間企業のノウハウ、資金、技術などを活用するとともに、民間企業の海外展開を後押しすることを目的としており、PPP *2、BOPビジネスの事業化提案を民間企業より公募し、当該提案法人にフィージビリティ調査(F/S)*3を委託するものです。
今後、経済外交に資するODA を推進するため、こうした枠組を一層活用するとともに、経済界とのより緊密な協議や新たなツールの検討といった取組を積極的に進めていきます。
*1 STEP : Special Terms for Economic Partnership
*2 PPP : Public Private Partnership 官民パートナーシップ
*3 個々のプロジェクトが技術的、経済的、社会的に、さらには環境などの側面から見て実行可能であるか否かを検証し、最適な事業計画を策定するための調査。