8. 欧州地域

過去において共産主義体制にあった中・東欧、バルト、旧ソ連の欧州地域の多くの国々では、その後民主化および自由化を達成し、現在は民主的政権の下で市場経済に基づいた経済発展に取り組んでいます。日本は、これら地域および欧州全体のさらなる安定と発展のため、また普遍的価値(人権、民主主義、市場経済、法の支配)を共有できる関係を築くため、市場経済化、経済インフラの再建および環境問題などへの取組に対する支援を行っています。

インツコ・ボスニア・ヘルツェゴビナ和平履行上級代表による
伴野外務副大臣表敬

インツコ・ボスニア・ヘルツェゴビナ和平履行上級代表による 伴野豊外務副大臣表敬

< 日本の取組 >

欧州地域においては、2004年5月にEU加盟を達成した国(ポーランド、チェコ、ハンガリー、スロベニア、スロバキア、マルタ、バルト三国、キプロス)、2007年1月にEUに加盟したルーマニアおよびブルガリア、EUへの早期加盟を目指し改革努力を続けるクロアチアおよびマケドニア、民族紛争や国内の混乱の影響を受けたものの復興から開発段階へと移行しているボスニア・ヘルツェゴビナ、アルバニアおよびセルビア、近年独立を達成し新たな国づくりに向けた開発に取り組んでいるモンテネグロおよびコソボ、さらには市場経済の制度整備などが遅れている旧ソ連諸国のウクライナおよびモルドバと、国・地域ごとに経済発展水準は多様化しています。

旧ユーゴスラビアを中心とする西バルカン諸国は、1990年代に発生した紛争の影響で改革が停滞していましたが、各援助国や、国際機関などの支援および各国自身の改革努力により、復興支援を必要とする段階を卒業し、現在は持続的な経済発展に向けた支援が必要な段階にあります。日本は2004年にEUと共催で開催した西バルカン平和定着・経済発展閣僚会合で確認された「平和の定着」、「経済発展」、「域内協力」の3本柱を援助重点分野として支援を展開してきましたが、引き続き、特に「平和の定着・民族融和」および「環境・気候変動問題への対策」を重点方針として支援しています。旧ソ連諸国であるウクライナやモルドバは、ロシアとEUの間に位置するという地政学上の重要性を有しており、これら諸国の安定と持続的発展は、欧州全体の安定にとって必要不可欠です。この観点から、民主主義の定着と市場経済の確立に向けた努力を支援しています。

かつて日本のODA対象国であった国々も、ルーマニアとブルガリアを除き、EUへの加盟を機に日本のODA対象国から外れ、ODA供与国としての国際的役割を担い始めています。日本は、これらの国々とODAの供与国としての経験を共有するための取組を行っています。

図表III-18 欧州地域における日本の援助実績

●ボスニア・ヘルツェゴビナ「ウグレヴィック火力発電所排煙脱硫装置建設計画」

ボスニア・ヘルツェゴビナでは、紛争後の復興期に緊急性の高い分野における開発が優先されたため、環境対策は遅れています。ウグレヴィック火力発電所は、ボスニア・ヘルツェゴビナにおいて電力を安定的に供給するために不可欠な発電所である一方、SO2(二酸化硫黄)排出量がボスニア・ヘルツェゴビナの火力発電所の中でも最悪の水準で、環境保全への取組を強化する必要性が指摘されていました。そこで日本は、約126億円の円借款を通じて排煙脱硫装置の建設と関連設備の整備を行い、SO2や粉じん排出量の大幅削減、ボスニア・ヘルツェゴビナの環境改善を支援しています。

ウグレヴィック火力発電所全景   (写真提供 : JICA)

ウグレヴィック火力発電所全景  (写真提供 : JICA


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