3.地球規模課題への取組
(1)環境・気候変動問題
環境問題についての国際的な議論は1970年代に始まりました。1992年の国連環境開発会議「地球サミット(UNCED(注34))」、2002年の「持続可能な開発に関する世界首脳会議(WSSD(注35))」での議論を経て、国際的にその重要性が、より一層強く認識されました。2008年7月のG8北海道洞爺湖サミットにおいては、環境・気候変動が主要テーマの一つとして取り上げられ、建設的な議論が行われました。環境問題は、未来の人類の繁栄のためにも、国際社会全体として取り組んでいく必要があります。
森林保全と気候変動に関する閣僚級会合にて共同議長を務める前原誠司外務大臣
< 日本の取組 >
環境汚染対策においては、日本は多くの経験や技術を蓄積しており、それらを開発途上国の公害問題に活用しています。特に、急速な経済成長を遂げつつあるアジア諸国を中心に、都市部での公害対策や生活環境改善(大気汚染、水質汚濁、廃棄物処理など)への支援を進めています。
気候変動問題は、国境を越えて人間の安全保障を脅かす、人類にとって喫緊の課題であり、先進国のみならず、開発途上国も含めた国際社会の一致団結した取組の強化が不可欠です。2009年9月、鳩山内閣総理大臣は国連気候変動首脳会合で、すべての主要国による、公平かつ実効性のある国際枠組みの構築と意欲的な目標の合意を前提に、温室効果ガス排出量を1990 年比で2020年までに25%削減すると発表しました。
2009年12月にデンマークのコペンハーゲンで行われた気候変動枠組条約第15回締約国会議(COP15)において、首脳レベルの協議・交渉の結果、「コペンハーゲン合意」が作成され、COP全体会合において同合意に留意するとの決定が採択されました。日本は、温室効果ガスの排出削減など気候変動対策に意欲的に取り組む開発途上国や、気候変動の悪影響に脆弱な状況にある開発途上国を広く対象として、2012年末までの約3年間で官民合わせて1兆7,500億円規模(約150億ドル)の支援を実施していくことを発表するなど(注36)、COP15での交渉に大きな弾みを付けました。
また、開発途上国における森林減少・劣化に由来する排出の削減など(REDD+(注37))の議論については、COP15で大きな進展があったことを踏まえ、国際社会におけるREDD+の取組の連携・協調を強化することを目的として、2010年5月に「REDD+パートナーシップ」の構築が合意されました。日本は、パプアニューギニアと共に同パートナーシップの2010年末までの共同議長に選出され、10月に、森林保全と気候変動に関する閣僚級会合を主催しました。これまでにも日本は、REDD+の取組支援に積極的に取り組んでおり、2012年までの短期的支援として5億ドルの支援額を表明し、既に約2億ドルの支援を実施しています(2010年7月時点)。
●インドネシア第二次気候変動対策プログラム・ローン
インドネシアは、森林の減少および泥炭地荒廃などを含めると、中国、米国、ブラジルに次ぐ世界第4位の温室効果ガス排出国といわれています(注38)。また、同国では、 温暖化の進展に伴い、気候変動リスクが高まることが懸念されています。このような状況を受け、日本は、インドネシア政府による気候変動対策努力を支援するため、約374億円(緊急財政支援円借款約94億円を含む)の円借款を供与しました。これにより、<1>温室効果ガス吸収・排出削減による温暖化緩和に貢献するほか、<2>気候変動の悪影響に対する適応能力強化、<3>気候変動に係る分野横断的課題への対応の推進が期待されています。
注34 : UNCED:United Nations Conference on Environment and Development
注35 : WSSD:World Summit on Sustainable Development
注36 : うち、公的資金約1兆3,000億円(おおむね110億ドル)。
注37 : REDD( Reducing Emissions from Deforestation and Forest Degradation in Developing Countries)とは、開発途上国における森林減少・劣化に由来する温室効果ガスの排出削減に関し、過去の推移などをもとに将来の排出量の参照レベルを設定し、資金などインセンティブを付与することにより、参照レベルからの削減を達成しようとする考え方。森林保全、持続可能な森林経営、森林炭素蓄積の増加に係る取組を含む場合には、「REDD+」と呼ばれる。
注38 : (出典)World Resource Institute Climate Analysis Indicators Tool (WRI CAIT) "Sum of "Total in 2007" and "LUCF in 2005" (2007)