(5)政策立案・制度整備
開発途上国の持続的成長のためには、経済社会基盤の整備とともに政策立案・制度整備や人づくりが重要です。汚職の撲滅、法・制度の改革、行政の効率化・透明化、地方政府の行政能力の向上などへの支援が必要です。
< 日本の取組 >
政策立案・制度整備支援の一環として、法制度整備支援を進めています。法制度整備は良い統治(グッド・ガバナンス)に基づく自助努力を通じた国の発展の基礎となるものです。同分野への支援は「人と人との協力」の代表例であり、日本の顔が見える援助の一翼を担っています。また、それにより開発途上国の法制度が整備されれば日本企業の活動の円滑化にもつながることから、2010年6月に公表された新成長戦略の実現に向けたインフラ海外展開の基盤整備支援(注32)のひとつとして、極めて重要な役割を担います。日本の法制度整備支援は、日本のソフトパワーによる支援であり、アジアの成長力強化を下支えするために重要な役割を果たしています。
また、民主的発展の支援のために、法制度、司法制度、行政制度、公務員制度、警察制度などの各種制度整備や組織強化支援、選挙支援、市民社会の強化、女性の地位向上支援などの取組を行っています。汚職の防止や統計能力の向上、地方行政能力の向上の支援も行っています。国連アジア極東犯罪防止研修所(UNAFEI(注33))では、2010年10月から11月にかけ、アジア・太平洋地域を中心とする開発途上国16か国の刑事司法実務家を招き、汚職防止刑事司法支援研修を実施しました。さらに同年12月には、東南アジア8か国の刑事司法実務家を対象に、証人および内部通報者の保護をテーマとするセミナーを、フィリピンで開催しました。同研修所では、そのほかにも、「犯罪被害者のための施策」、「犯罪者の社会への再統合と再犯防止」、「犯罪収益の剥奪」など、参加国のニーズと国連の重要施策に沿って刑事司法分野の様々な課題を取り上げ、開発途上国の実務家向けの研修・セミナーを実施しています。さらに、特定のプロジェクトだけではなく、開発途上国の財政に資金を投入する政策立案・制度改善支援も実施しています。
国内治安維持の要となる警察機関の能力向上については、制度づくりや行政能力向上への支援など人材育成に重点を置きつつ、日本の警察による国際協力の実績と経験を踏まえた知識・技術の移転と、施設整備や機材供与を組み合わせた支援を実施しています。警察庁では、インドネシア、フィリピンなどのアジア諸国を中心に専門家の派遣や研修の受入れを行っており、民主的に管理された警察として国民に信頼されている日本の警察の姿勢や事件捜査、鑑識技術の移転を目指しています。
●カンボジア「政府統計能力向上プロジェクト」
統計データは、政策を立案する上で大変重要なものですが、カンボジアの政府統計は、長期間に及んだ内戦の影響から整備が遅れていました。JICAは2005年度に政府統計に携わる人材の能力向上を目指したプロジェクトを開始し、主に2008年3月に実施された人口調査を通じて技術協力を行ってきました。人口調査の結果は、国および地方の政策立案や、ミレニアム開発目標(MDGs)のモニタリングなどに活用されており、カンボジアのさらなる発展に貢献することが期待されています。
製材所の責任者にインタビューする調査員(写真提供 : JICA)
注32 : 2010年6月に公表された新成長戦略~「元気な日本」復活のシナリオ~では、21の国家戦略プロジェクトが取り上げられており、インフラ分野の民間企業による海外での取組を支援する枠組みを整備することは、そのひとつとして位置づけられている。
注33 :United Nations Asia and Far East Institute for the Prevention of Crime and the Treatment of Offenders