(3)貿易、投資、ODA以外の資金との連携
開発途上国の持続的成長のためには、民間セクターの主導的な役割が鍵となり、産業振興や貿易・投資などの民間活動の活性化が重要です。しかし、数々の課題を抱える開発途上国では、民間投資を呼び込むための環境整備を行うことが困難な場合があり、国際社会からの支援が不可欠です。
< 日本の取組 >
ODAやそれ以外の公的資金(OOF(注26))を活用して、日本は開発途上国内の中小企業振興や産業技術の移転、経済政策などの支援を行っています。また、開発途上国の輸出能力や競争力を向上させるため、貿易・投資環境や経済基盤の整備も支援しています。2001年に始まった「世界貿易機関(WTO)ドーハ・ラウンド交渉(ドーハ開発アジェンダ)」においても、開発途上国の多角的自由貿易体制への参画を通じた開発促進が重視されています。日本は、(WTO)に設けられた信託基金に拠出し、開発途上国の交渉参加能力およびWTO協定履行能力の向上を目指しています。
日本市場へのアクセスに関しては、一般特恵関税制度(GSP(注27))により、開発途上国産品の輸入に際し、一般の関税率よりも低い税率を適用し、特に後発開発途上国(LDCs)諸国に対しては無税無枠措置(注28)をとっています。また、日本は、経済連携協定(EPA)を積極的に推進しており、貿易・投資の自由化を通して開発途上国の経済成長を支援しています。
こうした日本を含む先進国による支援をさらに推進するものとして、近年、(WTO) や経済協力開発機構(OECD)をはじめとして様々な国際フォーラムにおいて「貿易のための援助(AfT(注29))」に関する議論が活発化しています。2005年12月に開かれたWTO香港閣僚会議に際し、日本は2006年から2008年の3年間に合計1万人の専門家派遣および研修員受入れを行う技術協力を含む総額100億ドルの貿易関連プロジェクトへの支援を行うことなどを柱とした「開発イニシアティブ」という独自の貢献策を発表しました。
さらに2009年7月のWTO第2回「貿易のための援助」グローバル・レビュー会合では、この「開発イニシアティブ」の達成を受けて、新たに2009年から2011年の3年間に4万人の専門家派遣および研修員受入れを行う技術協力を含む総額約120億ドルの貿易関連プロジェクトへ支援することなどを柱とした「開発イニシアティブ2009」を発表し、多くの国から高い評価を得ました。現在、その着実な実施が進められており、具体的な取組としては、貿易を行うために重要な港湾、道路、橋などの輸送網整備や発電所・送電網などの建設事業への資金供与や税関職員の教育などの貿易関連分野における技術協力、さらに「一村一品キャンペーン(注30)」にも関係する支援を行っています。また、開発途上国への民間投資を呼び込むため、開発途上国特有の課題を抽出し、投資を促進するための対策を現地政府に提言するなど、民間投資を促進するための支援を行っています。
注26 : OOF:Other Official Flows
注27 : GSP:Generalized System of Preferences
注28 : これまでLDCsに対する無税無枠措置の対象品目を拡大してきており、品目数では約98%、貿易額では99%超が無税無枠での輸入が可能となっている(2010年10月時点)。
注29 : AfT:Aid for Trade
注30 : アジア、アフリカなど開発途上国の民族性豊かな手工芸品、織物、玩具など魅力的な商品を掘り起こし、より多くの人々に知ってもらうことで、開発途上国の商品の輸出向上を支援する取組のこと。