(3)水と衛生
水と衛生の問題は人の生命に関わる重要な問題です。水道や井戸など安全な水を利用できない人口は2008年に世界で約8億8,400万人、下水道などの基本的な衛生施設を利用できない人口は約26億人にのぼります(注19)。安全な水と基本的な衛生施設の不足は下痢を引き起こし、年間150万人以上の5歳未満の子どもが命を落としています(注20)。
< 日本の取組 >
2006年に開かれた第4回世界水フォーラムで日本は「水と衛生に関する拡大パートナーシップ・イニシアティブ(WASABI(注21))」を発表しました。水と衛生分野で援助実績が世界一である日本は、同分野に関する豊富な経験、知見や技術を活かし、総合水資源管理の推進、安全な飲料水と衛生の供給、食料増産などのための水利用支援、水質汚濁防止と生態系保全、水関連災害による被害の軽減などソフト・ハード両面での包括的な支援を実施しています。2008年5月の第4回アフリカ開発会議(TICAD IV)では、給水施設や衛生施設の整備および水資源管理に関する人材育成などの支援策、および「水の防衛隊(W-SAT)(注22)」の派遣を表明しました。さらに、2008年7月のG8北海道洞爺湖サミットでは水と衛生の問題を約5年ぶりに取り上げ、循環型水資源管理の重要性を確認し、これを推進することを通じて水資源の持続的利用を促進しています。
エチオピアでロープポンプの給水設備技術を指導(写真提供 : JICA)
●パプアニューギニア「ポートモレスビー下水道整備計画」
パプアニューギニアの首都ポートモレスビー市の沿岸部には下水処理場が存在しないため、集められた汚水は適切な処理が行われないまま沿岸に放流されており、沿岸域の海水の水質汚染や地域住民の衛生環境の悪化を引き起こしています。日本は、約83億円の円借款を通じて下水道の整備を支援し、同地域への下水道サービスの提供および沿岸海域への汚水流出の抑制を図っています。本事業により、住民の生活環境の改善、海洋環境保全および地域経済の発展に寄与することが期待されています。また、本事業では同国政府からの要請により、下水処理施設を省エネルギーで運転させる日本の優れた技術とノウハウが活用される予定です。
●ザンビア「地方給水運営維持管理能力強化プロジェクト(SOMAP)(注23)フェーズ2」
井戸と手押しポンプによって安全な飲み水を入手する農村地域でも、修理部品が入手できないため故障したポンプが修理されずに放置されることがあります。日本は、修理部品の販売網を構築し、ポンプを利用する住民への啓発活動や修理技師への研修を実施することで、住民や自治体による施設の持続的な運営維持管理を目指しています(注24)。
注19 :(出典) WHO/UNICEF“ Progress on Sanitation and Drinking-water: 2010 Update”( 2010)
注20 :(出典) UNICEF“ Progress for Children: A Report Card on Water and Sanitation”( 2006)
注21 : WASABI:Water and Sanitation Broad Partnership Initiative
注22 : W-SAT:The Water Security Action Team
注23 : SOMAP:Sustainable Operation & Maintenance Project for Rural Water Supply
注24 : フェーズ1は2007年に終了し、現在フェーズ2が進行中。