2. JICAの改革
JICAは2008年10月の新JICA誕生(注12)を機に3つの援助手法を統合的に実施する援助実施機関となりました。今後はその専門性とネットワークを活かし、援助の現場における開発ニーズと実態の把握や分析、新たな援助手法と分野の開拓、援助実施の機能を強化していきます。そのため、分析力や構想力の強化、実施体制の整備、さらに効率的な事業実施に引き続き取り組んでいきます。同時に、外務省とJICAの業務で重複するもの、調整コストを含めて簡素化できるもの、外務省からJICAへ移管できるものを洗い出し、全体の業務を合理化していきます。これにより、外務省とJICAはそれぞれの役割をより良く果たし、相乗効果を発揮できるように取り組んでいきます。
「ODAのあり方に関する検討」においては、JICAは下記の3つの柱を中心に、援助の実施体制を強化することとしました。
(1)事業構想力の強化
JICAの専門性が高い「開発ニーズ分析」を充実させ、事業構想力を強化します。具体的には、援助対象国のニーズと開発政策を分析し、今後5年間の候補案件を国別・課題単位のプログラムとして構想し、相手国政府やほかの援助国・機関とも協議した上で、日本政府の国別援助計画に反映するよう提案します。その際、新JICA発足とともに設置された「JICA研究所」を活用し、日本の経験や技術と開発途上国のニーズの変化を踏まえた新たな事業モデルを開発し、発信していきます。現時点での取組としては、アフリカ向け米増産支援、パッケージ型インフラ整備、気候変動対策支援、およびBOPビジネスとの連携の促進などが挙げられます。
(2)機動力のある実施体制の整備
構想したプログラムには、過去の教訓などをその計画立案に着実に反映(PDCAサイクルの徹底)させ、適切な成果指標に基づき事業を実施します。併せて、効果的な援助実施体制を整備するため、職員の在外展開を強化し、また、専門家、ボランティア、国内拠点、技術研修員など多様な関係者を活用し、開発政策議論をリードし、NGOの支援強化、海外投融資の再構築などによる民間との連携を強化します。なお、平和構築の現場など不安定な開発途上国・地域における安全管理といった、ますます重要になりつつある現地実施体制の整備には十分に取り組みます。
(3)徹底したコスト削減とガバナンスの強化
事業仕分けの結果を踏まえ、徹底したコスト削減とガバナンスの強化により、さらに効率的な事業実施を目指します。専門家、ボランティア、NGO、コンサルタントなどから、JICAへの改善提案を受け付ける仕組みを制度化するほか、内部的な統制機能(事業審査・評価、事後監査、コンプライアンス体制、調達監視など)の強化、研修員受入れ、旅費や委託業務の見直しによるコスト削減を徹底していきます。
注12 旧JICAは、技術協力の実施と無償資金協力の実施促進を業務の中心としていたが、JICA法改正により、2008年10月1日に誕生した新JICAは、これら業務に加え、それまで国際協力銀行(JBIC)が海外経済協力業務として担当してきた有償資金協力(円借款など)も実施することとなった。さらに、外務省が実施してきた無償資金協力についても、一部を除いて実施部分を担当することとなった。