5. 多様な関係者との連携
(1)NGOとの連携強化
より効果的な開発協力を行っていくためには、開発途上国の現場の知見を豊富に持ち、草の根レベルの支援を実施するNGOとの連携の重要性が高まっています。
NGOの意見や提言を聴取し、外務省のODA政策の企画立案や実施に活かすことを目指し、外務大臣の下にNGOアドバイザリー・グループ(注8)を設置し、意見交換を行いました。また、NGOの活動を資金面から柔軟に支援できるよう、日本NGO連携無償資金協力やJICA草の根技術協力などの資金協力スキームの予算規模や支援内容を拡充する制度の見直しを行いました。
さらに、NGOで経験を積んだ人材の知見を政策立案などに活かすために外務省やJICAとの人的な交流の促進に向けた検討を進め、関係者との一層の連携強化を目指します。
(2)民間企業との連携
日本は、2008年に「成長加速化のための官民パートナーシップ」を発表するなど、ODA事業における官民連携の推進に取り組んできました。特に、ODA事業の案件の発掘・形成の段階で、民間企業のニーズを一層取り入れるため、民間提案型制度の充実を図っています。2010年から、民間企業からの提案に基づき将来的な円借款などのODA支援も念頭においた事業化調査である協力準備調査(PPPインフラ)を実施しています。また、協力準備調査(BOP(注9)ビジネス連携促進)による、BOPビジネスとODAの連携についての民間からの提案の受け付けや、BOPビジネス支援センター(注10)の設立などを通じ、ODAによるBOPビジネス支援の新たな手法などの開発に取り組んでいます。
(3)国際機関との連携-マルチ・バイ連携の強化
日本は、二国間援助と国際機関を通じた援助の連携(マルチ・バイ連携)の強化を通じ、国際的な援助潮流を二国間の援助政策に反映させるとともに、日本に比較優位がある二国間援助のアプローチを国際的に主流化することを目指しています。また、二国間援助と国際機関を通じた援助を効果的に組み合わせ、援助効果の向上を図ることも目指しています。
(4)新興ドナーとの連携
近年、開発途上国の開発において新興国の援助国(ドナー)が影響力を増しています。新興ドナーが、国際的な取組に沿って援助をすることは、全体としての援助効果を向上させるためには必要不可欠です。日本は、新興ドナーが透明で責任ある援助を行うように、様々な対話の機会に働きかけを行っています。2010年には、中国や東欧の援助関係者に日本の援助手法や経験を紹介し、意見交換を行いました。また、ほかの援助国・機関との対話の際には新興ドナーの問題についても意見交換し、情報共有を進めるとともに、援助効果を高めるために協力して働きかける可能性も模索しています。
注8 日本の国際協力の在り方について実際の支援の現場からの意見・提言を聴取する場として、岡田外務大臣の下に設置された。このグループには、国際協力に係る知見と経験の豊富さが特に参考になるとして、大臣らが個別に指名した国内NGO関係者6名が常任メンバーとして参加する。2010年5月25日の第1回会合では、ODAの見直しについて意見・提言を聴取した。2か月に1回をめどに会合を開催し、国際協力に係る様々なテーマについて意見交換を行った。
注9 BOP : Base Of the economic Pyramid。 所得ピラミッドの土台の部分の意味。開発途上国・地域の低所得階層を指す。
注10 : 2010年10月に設立された、BOPビジネスを総合的に支援する仕組み。企業、NGO/NPO、国際機関、支援機関、学術機関などを会員とし、ポータルサイトによる一元的情報提供、マッチング(関係者間の情報交換・連携促進)支援、相談窓口などの機能を有する。(http://www.bop.go.jp/)