第3章 TICADプロセスを通じた取組
MDGsの達成において重要な鍵を握るアフリカ諸国への支援を日本は積極的に行っています。
日本は、アフリカの自助努力(オーナーシップ)と国際社会の協力(パートナーシップ)を基本理念とする「アフリカ開発会議(TICAD)」のプロセスを基軸として、アフリカ自身による開発課題への取組に対する協力を積極的に実施しています。
2008年5月に横浜で開催された「第4回アフリカ開発会議(TICAD Ⅳ)」では、近年のアフリカに見られる前向きな変化を後押しするため、「元気なアフリカを目指して-希望と機会の大陸」を基本メッセージとし、国際社会の知恵と資金を結集すべく、アフリカ開発の方向性について活発な議論が行われました。その重点事項は、インフラ整備や投資環境整備を通じた貿易や投資の促進などの「成長の加速化」、「ミレニアム開発目標(MDGs)達成」および「平和の定着とグッド・ガバナンス(良い統治)」を含む「人間の安全保障の確立」、「環境・気候変動問題への対処」です。日本は、対アフリカ支援策を発表し、2012年までのアフリカ向けODAの倍増(注8)、民間投資倍増への支援、5年間で最大40億ドルの円借款供与などを打ち出したほか、同会議で発表された「横浜行動計画」において分野別の様々な支援策を表明しました。
1. TICADフォローアップ会合
2009年3月、金融・経済危機が世界を席巻する中、南部アフリカのボツワナで開催された第1回TICAD閣僚級フォローアップ会合において、日本は金融・経済危機がアフリカの成長とMDGs達成を後退させてはならないとの強い決意の下、「危機対策のための支援パッケージ」(注9)を表明しました。翌2010年5月にタンザニアで開催された第2回閣僚級フォローアップ会合(注10)では、同パッケージが着実に実施されたことを確認するとともに、TICAD Ⅳの公約が進ちょくしていることが評価されました。具体的には、2008~2009年のアフリカ向けのODAの額は年平均で、公約の目標額18億ドルに迫る、17億ドルを達成しました。また、円借款は、2010年3月末現在で公約の目標額40億ドルのうち、45%まで供与の決定を済ませました。「横浜行動計画」に記載された分野別の支援の大部分が着実に実施されている一方で、今後の課題として、2009年の金融・経済危機の影響を受けた日・アフリカ間の貿易・投資・観光の一層の促進が指摘されました。日本からは、今後の取組として、円借款の活用を図り、今後2年間で最大20億ドル相当のインフラ案件を実施すること(注11)、2010年から次回のフォローアップ会合までに母子保健などのMDGs関連分野で約10億ドルの支援を行うこと、気候変動対策のためのアフリカ支援を強化するとともに次期枠組構築に向けてアフリカと協働していくことを表明し、参加各国から歓迎されました。
同会合では、G8、G20、MDGs国連首脳会合などの重要な国際会議に対し、アフリカの視点からの声を伝えるべく、会合の成果としてコミュニケ(公式声明)が採択されました。同コミュニケにおいては、日本政府のTICADへの取組への評価のみならず、MDGs達成に向けて国際社会が支援を強化すること、アフリカ自身が政治的意思をもってその達成に取り組むことが重要であること、TICADフォローアップ・メカニズム (注12)が効果的に機能し、開発パートナーとアフリカ諸国による約束履行についての説明責任および透明性を向上させるモデルを提供していることなどが盛りこまれました。
エウズ・ベナン外相と会談する前原誠司外務大臣
注8 TICAD IVまでの5年間(2003~2007年)の実績の平均値を基準とし、2012年までに日本のアフリカ向けODAを9億ドルから18億ドルに倍増(債務救済を除く。アフリカ開発銀行などへの拠出を含む)。
注9 当面約20億ドルの無償資金・技術協力のできる限り早期の実施、約3億ドルの食料・人道支援、世界エイズ・結核・マラリア対策基金に約2億ドルを拠出することなど。
注10 65か国(うちアフリカから42か国、31名の閣僚級が参加)、45の地域・国際機関、12のNGO団体、民間セクターなど、総勢約430名が参加。日本から岡田外務大臣が出席し、タンザニアのムクロ財務経済大臣とともに共同議長を務めた。
注11 2010年5月4日、日本政府は、TICAD IVでの公約を踏まえ、2012年度末までの時限措置として、従来からの中進国の4分野(「環境」、「人材育成支援」、「防災・災害対策」、「格差是正」)に加えて、アフリカの経済成長を通じた貧困削減に資する広域インフラ、農業および農村開発案件などを円借款の対象とすることを発表した。
注12 TICAD IVで立ち上げられた、TICADプロセスの実施状況を検証するためのメカニズム。TICADフォローアップ会合も、このメカニズムの下、原則年1回開催されている。