コラム 2 アフリカの大地で学校建設に取り組む~カメルーンの小学校建設支援~
「日本は援助以上のものを残してくれる」。日本の小学校建設支援を評価するのは、カメルーン基礎教育省のンドンゴさん。「他国からの援助と比較しても、日本の援助はカメルーンに建設技術・管理能力の向上といった目に見えないものを残しています」ともいいます。
アフリカ中西部に位置するカメルーンは、チョコレートの原料となるカカオの生産などで知られ、また、熱帯雨林から草原まで擁する多彩な自然と250 を超える部族を抱え、“アフリカの縮図”とも呼ばれています。しかし、近年は財政の悪化から、教育施設の老朽化や不足が問題となっていました。このような問題を抱えるカメルーン政府の要請を受け、日本は1997年から今日まで一貫して小学校建設の支援*1を行っています。
日本のODAで建てられた小学校はモデル校としてカメルーン国内で高い評価を受けています。首都ヤウンデ市にある小学校の校長先生は、「エコール・デュ・ジャポン(日本の学校)のおかげで、子どもたちが整った教育環境で勉強できるようになりました。この学校は我々の誇りです」といいます。
西野由明(にしのよしあき)さんは、日本の協力でカメルーンに小学校建設が開始された当初から100校以上の建設に携わり、日本のみならずカメルーンの関係者からも厚い信頼を寄せられています。西野さんは、現在、大日本土木(株)のスタッフとして、建築資材の調達・管理、品質や工程の管理などに従事し、その仕事はすべての面にわたります。建設現場では西野さんのプロとしての鋭い視線が建設の一つ一つのステップに届きます。1982 年のザンビアを皮切りに現在に至るまでの22年間をアフリカでのプロジェクトに力を注いできた西野さん。カメルーンでの10年間では、日本の墨出し*2などの建築技術、品質管理、資材整理法、徹底した安全管理、現場での朝礼、申し送りにラジオ体操と日本の技術や習慣などを現地にうまく活かしてきました。
その中でも西野さんは“人づくり”に力を入れたといいます。「この10年間スタッフに対して、思いやり、気配り、感謝などの技術以外のことの大切さを繰り返し話してきたんです。大学を卒業しても就職口が見つからないのがカメルーンの現実。生きるための食料は必要、でも心の食料も必要不可欠ですよ」といいます。「心の食料」が満たされたスタッフとともに今日も西野さんは小学校建設に取り組んでいます。このように西野さんたちが努力している中、カメルーンは、2000年に小学校教育を無償化し、ミレニアム開発目標(MDGs)の一つである初等教育の完全普及を2015年までに達成するめどがついています。
10 年間にわたり苦楽を共にしてきたカメルーンのスタッフ。西野さんがマラリアで入院したとき、スタッフ全員が朝まで看病してくれたこともありました。「飛行機からカメルーンの赤土が見えるとほっとするんです」。そのカメルーンに恩返しがしたいと西野さんは、以前勤めていた会社が2009年にカメルーン撤退を決めたのを機に早期退職し、現在の会社に再就職してまでカメルーンに残り、小学校建設プロジェクトに取り組むことにしました。
「アフリカの大地で多くの人々と語り、握手を交わして来れたことに感謝しています」と今日も建設現場で現地のスタッフと一緒に汗を流しています。
*1 : 第1~4次小学校建設計画(一般無償資金協力)
*2 : 建築工事において建物の柱の中心線や床・壁の仕上げ面の位置などの工事の基準となる線をつけること。カメルーンではチョークを使うことが一般的であるが、雨に濡れて消えることを防ぐために墨出し機器を使う日本の技術を活用している
現地スタッフおよびエンジニアと(前列左端が西野さん) (写真提供 : 西野さん)
墨出し時の指導(写真提供 : 西野さん)