囲み 2 貿易のための援助
2008年9月の世界的な金融・経済危機の後、世界貿易は低迷が続いています。この厳しい状況を克服するには、先進国や新興国が保護主義を抑止しつつ、自由貿易体制を維持する努力を行うとともに、後発開発途上国(LDC)を含む開発途上国の多角的貿易体制へのさらなる統合を後押ししていくことが不可欠であり、これを様々な局面から支援するのが「貿易のための援助(AfT:Aid for Trade)」です。貿易自由化と「貿易のための援助」は、世界貿易再活性化のための車の両輪であるといえます。
「貿易のための援助」は、開発途上国が世界貿易機関(WTO)を中心とする多角的貿易体制の下で、貿易を通じて経済成長を達成することを目的とし、開発途上国に対して貿易関連のキャパシティ・ビルディングやインフラ整備の支援を行います。
日本は、この「貿易のための援助」に積極的に貢献するとの観点から、日本の援助手法を組み合わせた包括的アプローチである「開発イニシアティブ*1」を2005年に発表し、このイニシアティブに基づき、「貿易のための援助」の主要ドナー*2として第4回アフリカ開発会議(TICAD IV)におけるODA倍増を含めた貿易・投資分野の対アフリカ支援、開発途上国の市場参入を支援する「一村一品キャンペーン」といった特色ある支援などを実施し、3年間で所期の目標を達成しました。こうした実績は、これまでのアフリカ地域やアジア太平洋地域のレビュー会合*3において、高い評価を得ています。
現下の世界経済情勢なども踏まえ、日本は、2009年7月に、ジュネーブ(スイス)で開催された世界貿易機関(WTO)と経済協力開発機構(OECD)の共催による「第2回貿易のための援助グローバル・レビュー会合*4」の機会を捉え、新たな戦略として「開発イニシアティブ2009」を発表しました。このイニシアティブに基づき、日本政府は2009年から2011年の3年間に、以下の支援を実施していく予定です。
(1) 前回のイニシアティブでの目標を上回る総額120億ドルの「貿易のための援助」関連の二国間援助を行うとともに、人的能力拡充の需要にこたえ、4 万人の専門家派遣・研修員受入れを行う技術協力を実施する。
(2) 市場開放努力の面では、一般特恵関税制度(GSP)について制度全体に対する見直しを行う。
(3) 貿易金融分野では、G20ロンドン・サミットなどにおいて表明したコミットメントを着実に実施する。
こうした日本のリーダーシップは、上記のグローバル・レビュー会合(政府、JICAに加えて邦銀の関係者も参加)で高い評価を受け、日本をはじめとする先進国が「貿易のための援助」を着実に支援していくことで開発途上国の世界貿易への参画が促進されていくことが期待されています。
*1 : 2006年から2008年の3年間で、「生産」、「流通・販売」、「購入」の3つの局面それぞれについて、「知識・技術」、「資金」、「人」、「制度」への支援を組み合わせ、合計100億ドルの資金協力を行い、また、この分野での技術協力として合計1万人の専門家派遣・研修員受入れを行う。さらに、LDC諸国へは原則無税枠の市場アクセスを供与する。
*2 : 2006年は第1位(約46億ドル)、2007年は米国、世界銀行に次ぐ第3位(約44億ドル)。2008年は約78億ドル(順位は未定)。
*3 : アフリカ地域レビュー会合は2009年4月ルサカ(ザンビア)で、アジア太平洋地域レビュー会合は同年5月シェム・リアップ(カンボジア)で開催。
*4 : 第1回会合は、2007年11月開催。