3. 中央アジア・コーカサス地域

中央アジア・コーカサス地域に対する2008年の二国間政府開発援助
約1億6,378万ドル(約2億972万ドル)
二国間援助全体の約2.4%(約1.4%)

中央アジア・コーカサス地域は、ロシア、中国、南アジア、中東に隣接する地政学的な要衝であるとともに、石油、天然ガス、ウラン、レアメタルなどの資源を豊富に擁し、日本にとって戦略的に重要な地域です。日本は、人権、民主主義、市場経済、法の支配といった基本的価値の定着に向け、また、アフガニスタンやパキスタンなど、中央アジアに接する地域を含む広域的な視点も踏まえ、同地域の長期的安定および持続的発展のための国づくりを支援しています。

< 日本の取組 >

日本は、計画経済体制から市場経済体制への移行と経済発展の実現を支援するため、法制度整備や保健医療など社会セクターの再構築、市場経済化・経済発展のためのインフラ整備、制度づくりのための人材育成など様々な支援活動を行っています。たとえば人材育成支援として、ウズベキスタン、カザフスタン、キルギスに「日本人材開発センター(日本センター)」を開設し、日本の経験に基づくビジネスコースなどを提供することで、市場経済化に対応できる人材の育成に貢献しています。また、中央アジア諸国については2004年に、地域内協力の促進を目的として「中央アジア+日本」対話の枠組みを設立し、これまで様々なレベルでの対話や協力を実施しています。

カザフスタンおよびアゼルバイジャンのカスピ海沿岸には、日本企業も権益を有する世界有数の規模を誇る油田が存在し、その原油はパイプラインを通じて、中央アジア・コーカサス地域内を通過しています。同地域の安定化と経済発展は、国際エネルギー市場安定とエネルギー資源確保のためにも重要であり、公共サービスの改善や人材育成、発電所などのインフラ整備といった支援を行っています。

エレバン・コジェネレーション火力複合発電所建設計画(アルメニア)

アルメニアの発電所の多くは旧ソ連時代に整備されたもので、操業開始後およそ30年が経過しています。老朽化が進み、電力供給能力および信頼性が著しく低下しており、将来的に、深刻な電力不足が懸念されています。そこで日本は、首都エレバン市近郊の火力発電所の隣接地におけるコジェネレーション(注63)火力複合発電所の新設を支援することで、電力供給能力の増大、電力不足の緩和、および社会経済の安定的かつ持続的成長を支援しています。2005年に円借款の供与を開始し、2008年度には、鋼材価格およびタービン価格の高騰などを理由とする事業費の増加に対処するため、追加円借款を供与しました。

従来からの発電所全景

従来からの発電所全景(写真提供 : JICA


注63 : 発電と同時に発生した排熱を利用して熱需要に利用するエネルギー供給システム。

図表II-11 中央アジア・コーカサス地域における日本の援助実績


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