(2)スーダン
スーダンは、9か国と国境を接し、アフリカ最大の国土を有しています。また、ナイル川の水利を制し、紅海の自由航行にも影響を及ぼすため、その安定は、アフリカ全体にとって非常に重要です。
スーダンでは、1983年以降継続していた南北内戦が、2005年1月に南北包括和平合意(CPA)により終結し、暫定憲法が公布されるなど、和平に向けた本格的なプロセスが始まっています。しかし、約500万人にものぼる国内避難民、経済・社会基盤の破壊、武器拡散や地雷、多数の元兵士の存在など、内戦の傷跡が残っています。また、西部ダルフール地域では、反政府武装勢力の活動が継続しており、政府の鎮圧活動と併せ、地域の開発と安定の阻害要因となっています。
< 日本の取組 >
2005年にノルウェーのオスロで開催された支援国会合において、日本は、当面1億ドルの支援を表明し、2007年度末までに約2億ドルの支援を実施しました。さらに、2008年にオスロで開かれた第3回スーダン・コンソーシアム会合では、国内避難民の帰還・社会再統合支援を進めるとともに、保健、水・衛生、教育、運輸などの基礎生活分野を中心に、当面、2億ドルの支援を表明しました。たとえば、20年以上続いた南北内戦により発生した計18万人とされる元兵士に対して、武装解除・動員解除・社会復帰(DDR(注49))の支援を行っており、同国の平和の定着や民主化支援に貢献しています。また、国際機関や日本のNGOと積極的に連携しながら、難民の帰還・再統合支援、地雷・不発弾の除去活動や回避教育、水供給関連施設整備、小児感染症対策などの医療支援、食料支援などを行っています。
さらに、日本は、スーダンの平和構築のため人的貢献を行っています。2008年10月、国連スーダン・ミッション(UNMIS)に自衛官2名を司令部要員として派遣したほか、国連機関職員として約30名、NGO職員として約25名の日本人がスーダンで活躍しています。
ダルフール問題に関しては、国連安全保障理事会や国際刑事裁判所(ICC(注50))においても取り上げられているなど、国際社会の大きな懸案となっています(注51)。日本は、ダルフールにおける「和平」、「正義」を両立させるべく、この問題の解決に向け、国連安全保障理事会と歩調を合わせ、スーダン政府を含む関係者の具体的努力を引き続き働きかけています。さらに、日本は、スーダンにおける和平プロセスを推進するための支援として、ダルフール和平合意(DPA(注52))に基づき設けられたダルフール・ダルフール対話(注53)に対し、現地住民の声を集約するためのセミナーを開催しています。
スーダン支援は、TICAD IVの重点分野の一つに掲げられているとともに、日本が対アフリカ政策の重要な柱として強調する「平和の定着」に向けた支援の一例でもあります。スーダン国民が等しく平和を享受することが重要であるとの考え方に基づき、今後も同国の平和の定着に向け、取り組んでいく考えです。
注49 : 2010年予定の総選挙、2011年予定の南部独立を問う住民投票、南北両軍の武装解除・動員解除・社会復帰(DDR)等の実施を今後の主な取組内容としている。
注50 : ICC:International Criminal Court
注51 : スーダン西部のダルフール地方では、2003年ごろから紛争に伴うアフリカ系住民、特に婦女子に対する暴力行為が激化しており、これまで約30万人が死亡し、難民・国内避難民約270万人が発生しているといわれている。
注52 : 2006年5月に、スーダン政府と一部反政府勢力との間で、ダルフール和平合意(DPA)が署名されたが、主要反政府勢力の署名拒否により、その後も紛争が継続している。同地域の人権・人道状況は、国際社会の強い関心事項となっている。
注53 : スーダン政府とダルフール反政府勢力の和平プロセスに、収奪された財産の補償や土地の返還等の住民の利害に絡む問題に関する現地住民の意見を反映するためのシステム。