(5)防災と災害復興
世界各国で頻繁に発生している地震や津波、台風、洪水などの災害は、多くの人命や財産を奪うとともに、経済・社会システム全体に深刻な影響を与えています。特に、災害に対して脆弱な開発途上国では、貧困層が大きな被害を受け災害難民となることが多く、さらに衛生状態の悪化や食料不足といった二次的被害が長期化することが大きな問題となっています。
< 日本の取組 >
日本は、自らの過去の災害経験から培われたすぐれた知識や技術を活用し、緊急支援と並んで災害予防および災害復旧分野において積極的に支援を行っています。2005年には神戸で開催された国連防災世界会議において、国際社会における防災活動の基本的な指針となる「兵庫行動枠組2005-2015」が採択されました。日本は国連などと協力してその世界的な実施を推進しています。
また、この会議において日本はODAによる防災協力の基本方針などを「防災協力イニシアティブ」として発表しました。そこで日本は、制度構築、人づくり、経済社会基盤整備などを通じて、開発途上国における「災害に強い社会づくり」への自助努力を積極的に支援していくことを表明しました。また、2005年のアジア・アフリカ首脳会議では、防災分野に対して、5年間で25億ドル以上の支援を行うことを表明し、支援を着実に実施しています。
バングラデシュ人道支援
2007年11月15日から16日にバングラデシュを横断したサイクロン「シドル」は、死者3,363人、行方不明者871人を出し、これを受け日本は緊急援助物資の供与を行いました。さらに今回の災害で有効性が改めて確認されたサイクロンシェルター(避難所)を同国政府の要請に基づいて無償資金協力により供与しました。多目的サイクロンシェルターの整備により、新たに6万1,000人の避難場所が確保されることが期待されています。
洪水制御セクター・ローン(インドネシア)
インドネシアの主要地方都市では、洪水被害が頻繁に発生しており、その対策が課題となっています。そこで日本は、河川・洪水制御インフラの整備を行っています。さらに、気候変動適応策を念頭に置いた流域管理事務所の能力強化、総合水資源管理計画策定のための各種支援などを実施しています。これらの支援を通して、同地域の洪水被害の軽減および経済発展に貢献しています。
● 国際緊急援助隊
日本は、海外で大規模な災害が発生した場合、被災国政府または国際機関の要請に応じ、迅速に緊急援助を行う体制を整えています。人的援助としては、被災者の捜索・救助活動を行う救助チーム、被災者に対して医療活動を行う医療チーム、災害応急対策などについて専門的な助言・指導などを行う専門家チーム、また特に必要があると認められる場合に派遣される自衛隊部隊の4つがあります。また、物的援助としては、緊急援助物資の供与があります。海外4か所の倉庫に、被災者の当面の生活に必要なテント、発電機、毛布などを常時備蓄しており、災害発生時には迅速に被災国に物資を供与できる体制にあります。
2009年9月30日にインドネシア・西スマトラ州パダン沖で発生したマグニチュード7.6の地震は、死者約1,100人、負傷者約2,900人にのぼる大きな災害となり、日本は、10月1日にインドネシア政府からの要請を受け、国際緊急援助隊の派遣および緊急援助物資の供与を決定し、救助チーム、医療チーム、自衛隊部隊を派遣しました。さらに、メキシコ(新型インフルエンザ)、ブルキナファソ(洪水)、フィリピン(台風)、パプアニューギニア(コレラなどの感染症)、サモア(地震、津波)、ベトナム(台風)、インドネシア(地震(前述))、ラオス(台風)、ブータン(地震)に対し、緊急援助物資供与を実施しました。
医療活動を行う国際緊急援助隊(写真提供 : JICA)
中国四川省における大地震
2008年5月12日に中国四川省で発生したマグニチュード8.0の大地震は、死者約7万人にのぼる大災害となりました。日本は、総額5億円相当の緊急無償資金協力およびテントなどの緊急援助物資を供与しました。また、中国政府による要請を受け、国際緊急援助隊・救助チーム61名および医療チーム23名を派遣しました。
救助チームは、5月16日から19日まで連日、捜索・救助活動に当たりました。医療チームは、中国側と協議を行った結果、緊急医療ニーズの高い四川大学付属華西病院において、中国医療関係者と合同で医療活動に当たりました。医療チームは、5月21日からの10日間で、救急外来、ICU、放射線など8班に分かれて医療活動を行い、約1,500人の診療にかかわりました。
● 国際機関との連携
日本は、2006年に設立された世界銀行防災グローバル・ファシリティ(注46)への協力を行っています。このファシリティは、災害に対して脆弱な低・中所得国を対象に、災害予防の計画策定などの能力向上および災害復旧を目的としています。日本は、このファシリティに対し、3年間で600万ドルの資金を拠出しています。
防災の重要性への認識の高まりを背景に2006年の国連総会において、各国と、防災にかかわる国連機関や世界銀行などの国際機関が一堂に会しました。この総会にて、防災への取組を議論する場として、防災グローバル・プラットフォームの設置が決定され、2007年6月に第一回会合が開催されました。日本は、このプラットフォームの事務局である国連国際防災戦略(UN/ISDR(注47))事務局の活動を積極的に支援しています。2007年10月には、ISDRの兵庫事務所が設置されました。
注46 : Global Facility for Disaster Reduction and Recovery
注47 : UN/ISDR:United Nations International Strategy for Disaster Reduction
「第一回斜面防災世界フォーラム」
2008年11月、世界中の斜面災害関係者が一堂に会する「第一回斜面防災世界フォーラム」が東京にて開催されました。日本はUN/ISDR事務局を通じて同フォーラム開催のため、15万ドルの支援を行い、日本が知見・技術を有し、これまで主導的に推進してきている斜面災害分野の国際協力に貢献しました。