(7)文化復興・振興

開発途上国では、その国の文化の振興に対する関心が高まっています。たとえば、その国を象徴するような文化遺産は、観光資源として周辺住民の社会発展に有効に活用できるだけではなく、その国の人々の誇りでもあります。しかし、開発途上国では、危機にさらされている文化遺産も多く、そのような文化遺産を守るための支援は、人々の心情に直接訴えかけるとともに、長期的に効果が持続する協力の形といえます。また、これら人類共通の貴重な文化遺産の保護は、開発途上国のみならず国際社会全体で取り組むべき課題といえます。

< 日本の取組 >

日本は、世界でもあまり例を見ない、文化・高等教育振興のためのプロジェクト支援を目的とした文化無償資金協力(一般文化無償資金協力および草の根文化無償資金協力)により、日本語教育や、柔道・空手などの日本武道振興、日本文化紹介事業などにも使用される機材の供与や施設の整備などを行っています。これらの取組を通じて、開発途上国の将来を担う青少年の健全な育成を通じた人づくり支援、日本と相手国との文化分野での交流促進、および「人」と「人」との交流を通じた相互理解の促進を図っています。

さらに日本は、国連教育科学文化機関(UNESCO(ユネスコ))に文化遺産保存日本信託基金を設置し、文化遺産の保存・修復作業、そのために必要な国際専門家の派遣や機材供与、事前調査などを行い、特に現地の人材育成に力を入れた協力を実施しています。さらには、いわゆる有形の文化遺産だけでなく、伝統的な舞踊や音楽、工芸技術、口承伝承などの無形文化遺産についても、同じくユネスコに設置した無形文化遺産保存日本信託基金を通じ、継承者の育成や記録保存などの事業に対する支援を行っています。

日本伝統武道への支援を通じた人づくり

世界の多くの国で、青少年の心身の健全な育成に役立つスポーツとして、柔道、空手、剣道といった日本の伝統武道が広く愛好されています。しかし、開発途上国では畳、道着などが不足し、活動に支障をきたしているところも多くあります。それらの活動を支援し、日本と相手国とのスポーツ分野での交流の促進および開発途上国の将来を担う人づくりに貢献すべく、2008年度には一般文化無償資金協力や、草の根文化無償資金協力を実施しました。この協力を通じて、ザンビアやソロモンなど計8か国のスポーツ団体が必要な器材を購入するために総額約6,450万円の資金を供与しました。

無形文化遺産保存日本信託基金

「バヌアツの砂絵」は、単なる芸術表現のみにとどまらず、部族間の通信、知識・技術などの継承のためのコミュニケーション手段でもあります。現在、継承者が減少して消滅の危機にあることから、日本はユネスコと協力して、砂絵の記録や法的保護制度の整備などを行い、現在では砂絵の研究が学校教育に取り込まれています。

(写真提供 : UNESCO(ユネスコ))


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