(6)債務問題への取組

開発途上国が、債務として受け入れた資金を有効に利用し、将来的に成長が実現するなど、返済能力が確保される限りにおいては、債務は経済成長に資するものです。しかし、返済能力が乏しく過剰に債務を抱える場合には、債務は開発途上国の持続的成長の阻害要因となります。

< 日本の取組 >

債務問題は、債務国自身が改革努力などを通じて自ら解決しなければならない問題ですが、過大な債務が開発途上国の発展の足かせになってしまうことは避けなければなりません。最貧国の債務問題に関しては、これまでに35か国の重債務貧困国(HIPCs)が拡大HIPCsイニシアティブ(注36)の適用を受けており、経済・社会改革などへの取組が一定の段階に達した結果、2008年度までに、24か国に対して包括的な債務削減が実施されています。2005年のG8グレンイーグルズ・サミットでは、HIPCsが国際通貨基金(IMF)、国際開発協会(IDA)およびアフリカ開発基金に対して抱える債務を100%削減するとの提案に合意がなされました(注37)。

また、重債務貧困国以外の低所得国や中所得国についても、重い債務を負っている国があり、こうした問題に適切に対応するため、2003年にパリクラブ(注38)において「エビアン・アプローチ」(パリクラブの債務リストラに関する新たなアプローチ)が合意されました。エビアン・アプローチでは、重債務貧困国以外の低所得国や中所得国を対象に、従来以上に債務国の債務持続可能性に焦点を当て、各債務国の状況に見合った措置が個別に検討され、債務持続に困難がある国に関しては、一定の条件を満たした場合、包括的な債務救済措置がとられることになりました。日本は、パリクラブなどの国際的な枠組みにおける合意などに基づき、債務の繰延(注39)、免除、削減などの措置によって、債務救済措置に協力しています。


注36 : 1999年のG8ケルン・サミットにおいて合意されたイニシアティブ。重債務貧困国に対する既存の国際的な債務救済イニシアティブをさらに拡充し、債権の100%の削減等を行うこととしたもの。

注37 : マルチ債務救済イニシアティブ(MDRI:Multilateral Debt Relief Initiative)

注38 : 特定の国の公的債務の繰延に関して債権国が集まり協議する非公式グループ。フランスが議長国となり、債務累積国からの要請に基づき債権国をパリに招集して開催されてきたことから「パリクラブ」と呼ばれる。

注39 : 債務の繰延とは、債務救済手段の一つであり、債務国の債務支払の負担を軽減するために、一定期間債務の返済を延期する措置。


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