(3)貿易、投資、ODA以外の資金との連携
開発途上国の持続的成長のためには、民間セクターの主導的な役割が鍵となり、産業振興や貿易・投資などの民間活動の活性化が重要です。しかし、数々の課題を抱える開発途上国では、民間投資を呼び込むための環境整備を行うことが困難な場合があり、国際社会からの支援が不可欠です。
< 日本の取組 >
ODAやそれ以外の公的資金(OOF(注29))を活用して、日本は開発途上国内の中小企業振興や産業技術の移転、経済政策などの支援を行っています。また、開発途上国の輸出能力や競争力を向上させるため、貿易・投資環境や経済基盤の整備も支援しています。2001年にスタートした「世界貿易機関(WTO)ドーハ・ラウンド交渉(ドーハ開発アジェンダ)」においても、多角的自由貿易体制への参画を通じて開発促進が重視されています。日本は、WTOに設けられた信託基金に拠出し、開発途上国のWTO協定履行および交渉参加能力向上などを目指しています。
日本市場へのアクセスに関しては、一般特恵関税制度(GSP(注30))により、開発途上国産品の輸入時において一般の関税率よりも低い税率を適用し、特に後発開発途上国(LDC)諸国に対しては無税無枠措置(注31)を行っています。また、日本は、経済連携協定(EPA)を積極的に推進しており、EPAを通じても開発途上国の経済成長の促進を図っています。
こうした日本を含む先進国による支援をさらに推進するものとして、近年、様々な国際フォーラムにおいて「貿易のための援助(AfT(注32))」に関する議論が活発化しています。2009年7月のWTO第2回「貿易のための援助」グローバル・レビュー会合にて日本は、2009年から2011年の3年間に総額約120億ドルの貿易関連プロジェクトへの支援を含む「開発イニシアティブ2009」という独自の貢献策を発表し、多くの国から高い評価を得ました。具体的な取組としては、貿易関連インフラの供与や技術協力、さらに「一村一品キャンペーン」にも関係する支援を行っています。また、開発途上国への民間投資を呼び込むため、開発途上国特有の課題を抽出し、投資を促進するための対策を現地政府に提言するなど、民間投資を促進するための支援を行っています。
注29 : OOF:Other Official Flows
注30 : GSP:Generalized System of Preferences
注31 : これまでLDCに対する無税無枠措置の対象品目を拡大してきており、品目数では約98%、貿易額では99%超が無税無枠での輸入が可能となっている(2009年12月現在)。
注32 : AfT:Aid for Trade
一村一品キャンペーン
アジア、アフリカなど開発途上国の民族性豊かな手工芸品、織物、玩具など魅力的な商品を掘り起こし、より多くの人々に知ってもらうことで、開発途上国の商品の輸出向上を支援する取組です。生産方法、商品開発や販路の拡大などに磨きをかけ、世界的に通用する商品の育成を図ることで、地域活性化を目指しています。日本国内の主要国際空港では、開発途上国の産品を販売し日本の消費者の方々に紹介する「一村一品マーケット」が運営されています。
投資促進(フィリピン)
日本は、フィリピン貿易産業省投資委員会(BOI)に対して、「投資促進アドバイザー」を派遣しています。同アドバイザーは、BOI委員長に対して組織・業務改善などを提言するとともに、フィリピン政府の投資促進計画の改訂作業に関する助言・指導や、BOIの海外市場マーケティング能力の改善のために指導を行っています。また、フィリピンにおいては日系企業による投資の重要性が高いことを踏まえ、BOIと進出日系企業の対話の促進や連携強化のための働きかけ、特定産業育成のための政策立案支援を通じて、ビジネス投資環境の改善に取り組んでいます。