第2節 気候変動対策への具体的協力
気候変動は、干ばつや洪水などの異常気象や温暖化による海面上昇など生活環境に様々な影響を及ぼします。これらに効果的に対処するためには、インフラや技術、情報、資金、管理能力などの社会経済環境を整備する必要がありますが(適応策)、特に開発途上国においては、そのような資金、技術および知見が不足しているため、気候変動への取組が遅れがちとなります。気候変動の影響で人間開発分野(注12)で積み重ねてきた進歩が停滞し、ひいては退行する危険もあります。2009年、環境分野における協力の一環として、ケニアのニャンド川の流域にある24の村落(コミュニティ)において、気候変動への適応策プログラムに基づき、防災構造物の建設を行うとともに、住民に対する防災意識の向上を図る洪水対策を行いました。また、気候変動の影響による洪水・干ばつなどが発生しているアフリカの4か国に安全で衛生的な飲料水を供給し、災害対策を行う資機材の調達資金を供与する無償資金協力を実施しました。
気候変動の原因となる温室効果ガスは、先進国のみから排出されているものではありません。現在、全世界の温室効果ガスの排出量の約半分は、京都議定書上、排出削減義務を負わない開発途上国から排出されており、開発途上国も持続可能な発展と貧困の撲滅を目指す過程で、「共通だが差異のある責任」の下、温室効果ガスの削減に努める必要があります。一方、先進国には、排出削減を進めていく能力や資金が不足している開発途上国の取組(緩和策)を積極的に支援していくことが求められています。2008年、日本はバングラデシュにおいて、CO2排出量を抑えた高効率のコンバインドサイクル火力発電所の建設および技術支援を行いました。発電量の増大と発電所の運営・維持管理の効率化などにより、従来型発電設備に比べてCO2排出量の大幅な削減が期待されています。
また、日本は政策策定についても積極的に支援しています。インドネシア政府が策定する気候変動対策国家行動計画をもとに、3年間(2007~2009年)にわたる「政策アクション」を設定し、その実績を評価した上で借款を供与する気候変動対策プログラム・ローンは、2008年に第1期分として約308億円を供与し、モニタリングを行いつつ2009年に第2期分として約374億円(緊急財政支援円借款約94億円を含む)を供与しました。
これらに加えて、日本のすぐれた環境関連技術を活用し、太陽光発電によるクリーンな電力供給などの支援を実施しており、火力発電を用いた場合に比べて温室効果ガスの大きな排出削減に貢献しています。
日本としては、これらの支援が開発途上国の気候変動への脆弱性の克服の一助となり、また、すべての主要国による公平かつ実効性のある次期枠組みの構築に向けた積極的関与の促進につながることを期待し、「鳩山イニシアティブ」の下、より一層の支援を実施していきます。
注12 : 極度の貧困の撲滅、保健医療、食料、教育等の分野。