第3章 環境・気候変動への取組
気候変動への対策は長期的かつ世界的取組を必要とする緊急の課題であり、気候変動問題は、今後も引き続き開発援助分野における最重要課題の一つでもあり続けます。日本は、2008年から、クールアース・パートナーシップの下で支援を行ってきましたが、2009年9月には「鳩山イニシアティブ」を表明し、開発途上国の気候変動対策への支援に一層積極的な取組を進めていくことにしました。
第1節 日本の取組~鳩山イニシアティブ
気候変動問題は、国境を越えて人間の安全保障を脅かす、人類にとって喫緊の課題であり、先進国のみならず、開発途上国も含めた国際社会の一致団結した取組の強化が不可欠です。世界全体での排出削減を達成するために、米国、中国を含むすべての主要国が参加する公平かつ実効的な国際的枠組みを構築していくことが重要です。
2009年9月、鳩山総理大臣は国連気候変動首脳会合で、先進国は率先して排出削減に努める必要があるとの観点から、日本も長期の削減目標を定めることに積極的にコミットしていくとともに中期目標についても、温暖化を止めるために科学が要請する水準に基づくものとして、すべての主要国による、公平かつ実効性のある国際枠組みの構築と意欲的な目標の合意を前提に、温室効果ガス排出量を1990年比でいえば2020年までに25%削減することを目指すと発表しました。この目標は、各国首脳や潘基文(ばんぎむん)国連事務総長などから意欲的なものとして歓迎されました。
同時に、気候変動問題への対策のため、とりわけ脆弱な開発途上国や島嶼国の適応対策のためには、大変大きな額の資金が必要とされており、この資金を戦略的に増やさねばなりません。これらの状況を踏まえ、鳩山総理大臣は9月の国連気候変動首脳会合で国際交渉の進展を注視しながら、これまで以上の資金的、技術的な支援を開発途上国に対して行う用意がある旨を述べ、「鳩山イニシアティブ」を表明しました。
その後、政府内で開発途上国支援に関する「鳩山イニシアティブ」の具体化に関する検討を進め、2009年11月には開発途上国向けの多国間の支援の制度的枠組み(2013年以降)について提案を行いました。そして、12月にデンマークのコペンハーゲンで開催された気候変動枠組条約第15回締約国会議(COP15)の場において、同イニシアティブの下での2012年までの開発途上国支援として、すべての主要国による公平かつ実効性のある枠組みの構築と意欲的な目標の合意を前提として、温室効果ガスの排出削減など気候変動対策に意欲的に取り組む開発途上国や、気候変動の悪影響に脆弱な状況にある開発途上国を広く対象として、2012年末までの約3年間で官民合わせて1兆7,500億円(おおむね150億ドル)規模の支援(うち公的資金1兆3,000億円(おおむね110億ドル))を実施していくことを決定した旨発表しました。この発表は、各国から歓迎されるとともに、交渉の進展に弾みを付けました。
今後、「鳩山イニシアティブ」を実行に移すことにより、日本は先進国と開発途上国との架け橋となり、世界規模での低炭素型社会への転換に貢献していきます。
気候変動枠組条約第15回締約国会議(COP15)で演説する鳩山由紀夫内閣総理大臣(写真提供 : FTP=時事)