第2節 パキスタンの経済安定化・テロ撲滅の取組への支援
1. パキスタン支援の意義
1998年5月にパキスタンが行った核実験以降、日本を含む多くの援助国がパキスタンに対する援助を縮小したことや、海外からの投資や海外在住パキスタン人からの送金が減少したことなどにより、パキスタン経済は悪化しました。しかし、2001年9月11日の米国同時多発テロの後、国際社会と協調してテロ対策を行うことを選択したパキスタンに対し、日本は同年10月にそれまでの援助縮小措置(緊急・人道的性格の援助および草の根無償を除く新規無償資金協力および新規円借款の供与の停止)の停止を決定しました。また、日本は2005年2月に策定した対パキスタン国別援助計画に基づき、電力、運輸、農村基盤などの経済インフラおよび社会インフラや教育、保健医療、水供給・衛生などの生活環境分野などの支援をパキスタンに対して実施してきており、米国同時多発テロ以降の日本の対パキスタン支援実績は、2001年度から2008年度までに円借款約1,059億円、無償資金協力約568億円、技術協力約131億円となっています。
テロ撲滅に向けた国際社会の取組において重要な役割を担うパキスタンが「穏健で近代的なムスリム国家」として安定的に発展することは、アフガニスタンをはじめとする周辺地域、ひいては国際社会全体の平和と安定に資することから極めて重要です。パキスタンは現在、テロ対策に加え、深刻な経済問題にも直面しています。これらの課題の解決のためには、パキスタン自らの取組が不可欠であると同時に、そうした取組を国際社会が一致して後押ししていくことが重要です。
ザルダリ・パキスタン大統領と会談する岡田克也外務大臣