第2節 対アフリカODA倍増に向けた支援の着実な実施

日本は、アフリカの自助努力(オーナーシップ)と国際社会の協力(パートナーシップ)を基本理念とするTICADプロセスを基軸として、アフリカ自身による開発課題への取組に対する協力を積極的に実施してきています。

2008年5月に横浜で開催された第4回アフリカ開発会議(TICAD IV)では、近年アフリカに見られる前向きな変化を後押しするため、「元気なアフリカを目指して-希望と機会の大陸」を基本メッセージとし、インフラ整備や投資環境整備を通じた貿易・投資促進などの「成長の加速化」、「MDGs達成」および「平和の定着とグッド・ガバナンス」を含む「人間の安全保障の確立」、「環境・気候変動問題への対処」を重点事項として、国際社会の知恵と資金を結集すべく、アフリカ開発の方向性について活発な議論が行われました。日本は、対アフリカ支援策を発表し、2012年までのアフリカ向けODAの倍増、民間投資倍増支援、5年間で最大40億ドルの円借款供与、また、無償資金・技術協力の倍増などを打ち出しました。

アフリカ大陸では、過去5年にわたり、各国の経済改革や良好な外部経済環境にも支えられ、年平均6%の経済成長率を記録しました。しかしながら、2008年9月以降の世界的な金融・経済危機により状況は一変しました。まず、国際金融市場にアクセスのあるエジプト、ナイジェリア、南アフリカなどが信用収縮の影響を受けました。その後、世界的な需要の後退、一次産品価格の急落、そして海外直接投資の減退による実体経済の悪化が、大陸全体で見られるようになりました。実際、国際通貨基金(IMF)は、アフリカ大陸の2009年の実質GDP見通しを1.69%(2009年10月1日現在)とし、世界銀行は、MDGsのすべての分野で遅れが見られるとしています。

この危機の深刻な影響を受けて、近年目覚ましい成長を遂げてきたアフリカ経済が減速し、MDGsの達成が大きく後退するならば、それは援助国・機関とアフリカ諸国のこれまでの努力が水泡に帰すことを意味します。そのような事態を避けるため、国際社会は協力しなければなりません。

この観点から、2009年3月にボツワナで開催されたTICAD閣僚級フォローアップ会合(注4)では、現下の金融・経済危機がアフリカに与える影響と対応策について、援助国・機関とアフリカ諸国の間で議論が行われました。日本は、世界的な金融・経済危機が日本経済に影響を与えるなかにあっても、TICAD IVの約束を必ず実行し、この危機に直面するアフリカを一層力強く支援していくこと、当面約20億ドルの無償資金・技術協力のできる限り早期の実施を目指すことを表明しました。また、この危機が広がるなかで最も深刻な影響を受けるのは社会的弱者であるとの認識に立ち、その影響を緩和するため約3億ドルの食料・人道支援を行うこと、および世界エイズ・結核・マラリア基金に約2億ドルを拠出することなどを表明しました。この会合に出席したアフリカ諸国は、日本の支援の実施状況やTICAD IVの公約実行への決意表明を高く評価しました。その一方で、経済危機の下、アフリカの成長が減速し、MDGsの達成が遅れることへの懸念と一層の支援の必要性が強調されました。同年4月にロンドンで開催されたG20金融サミットでは、日本は対アフリカ支援の強化を呼びかけました。さらに、鳩山総理大臣が出席した9月のG20ピッツバーグ・サミットにおいても最も脆弱な人々への支援の強化の必要性が確認されました。

2009年9月の第64回国連総会において、鳩山総理大臣は新政権の下でもTICADプロセスを継続・強化していくことを表明しました。また、同年10月には、岡田外務大臣が在京アフリカ外交団に対し、アフリカの<1>開発・成長に対する支援と<2>平和と安定に対する貢献を2つの柱とするアフリカ外交を進めていく旨を表明しました。現在、日本は、TICAD IVで表明した約束の実現に向け、アフリカのインフラ、農業、保健、教育、水・衛生、環境・気候変動など各重点分野におけるプロジェクトの発掘・形成を行っています。130件を超える協力準備調査をアフリカ諸国で実施し、具体的な支援策の着実な実施に取り組んでいます。円借款については、5年間で最大40億ドルの新規承諾を目指して、債務の持続性や具体的な開発ニーズなどを踏まえつつ、供与対象国の拡大を含む積極的な供与に取り組んでいます。

2008年のアフリカ向けODA実績総額は約17.5億ドルと、対前年比で約6.7億ドル(61.7%)増加しており、TICAD IVで表明した公約達成に向け、実施が進んでいます。日本は、鳩山政権の下でも2012年までの対アフリカODA倍増、民間投資倍増支援などのTICAD IVの約束実行に向け取り組みます。そのために、世界銀行、アフリカ開発銀行などの援助国・機関や、アフリカ各国できめ細かい援助活動を実施しているNGOなどとも引き続き連携しながら、対アフリカ支援を積極的に推進していきます。


注4 : 68か国(うちアフリカから48か国、37名の閣僚級が参加)、44の地域・国際機関、NGO5団体、民間セクターなど、総勢約430名が参加。

ムエシゲ・ウガンダ農業・畜産・水産大臣と会談する福山哲郎外務副大臣

ムエシゲ・ウガンダ農業・畜産・水産大臣と会談する福山哲郎外務副大臣

図表I-2 金融・経済危機がアフリカに与える影響と日本の支援


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