コラム 7 安定した農産物の供給を~セネガルの農村自立発展プロジェクト~

セネガルは西アフリカにある農業や漁業を主な産業とする国です。しかし年間の降雨量が少なく、農業にとって重要な水の確保のため、日本はこれまでセネガルの農村に給水施設を建設し、2003年にはその維持管理方法についての協力を行いました。2008年からはこうした農村の自立発展を支援するプロジェクトを行っています。

ムフムフ村はこうした農業支援プロジェクトの現場の一つで、様々な農業の生産性を向上させる取組を行っています。村は給水施設を中心にいくつかのグループに分かれ、それぞれ野菜作りや家畜の飼育を行っています。持続的で自立的な農業の発展を目指すこのプロジェクトを担うのはJICAコンサルタントの井上さん、後藤さん、西山さんたちです。持続的な農村生活を実現するためにそれぞれの専門的な視点から協力する彼らですが、時に伝えたいことを理解してもらえず困難を感じるそうです。たとえばセネガルの市場ではナスやトマトなどナス科の作物がよく売れるため、同じ畑で何度も栽培しますが、これによって病気が発生しやすくなります。このような害を防ぐためには時々異なった作物を植える必要があるのですが、生計と畑の持続的な利用の間でとまどっている村人たちに畑を使い続けることの大切さを説明し、理解してもらうには苦労がともないます。

この例のように、自立的な発展にはまだ克服すべき課題があるムフムフ村ですが、すでに上手くいっている事例もあります。この地域でのヨーグルトの生産は重要な収入源の一つです。ヨーグルトはセネガルではよく食べられ、これをいつでも販売することができれば安定した収入を得ることができます。そこでより良いヨーグルトをつくるためにヨーグルトの滅菌処理の方法を教えました。このヨーグルトの評判は良く、給水施設を管理する水管理組合の事務所で販売されていますが、ほぼ毎日売り切れてしまいます。また、雨期には牛乳の量が減るため、お客さんに続けて買いに来てもらうために粉ミルクによる生産も行っています。

商品を計画的に生産し安定的に供給するには、記録と管理が必要です。そこで管理簿に材料の集荷や生産、販売、品物の管理などを記録するようにアドバイスしました。この指導をした専門家の西山さんは「数字として明確に示されるので、やりがいもあるようで、皆さん、張り切って仕事に取り組んでいます。」と商品の管理に前向きに取り組み始めた村民の様子を話します。

また、このプロジェクトは農産物の生産性向上の他にも思わぬ効果をもたらしました。

女性が外に出て他の女性とコミュニケーションをとることにより、活き活きと働くようになりました。ある女性は「お互いに助け合ったり、教え合ったりしています。病気の時でも安心です。多くの人と交流できるのがうれしいですね。お陰で、地域全体が協力的になり住みやすくなりました。」と喜んでいます。

村の自立発展を目指すこのプロジェクトについて井上さんは、「今後は計画から実施、自己評価まで住民自身でできる体制を定着させていきたいですね。」と将来への抱負を語っています。

ヨーグルト作りの様子

ヨーグルト作りの様子(写真提供 : 西山さん)

野菜苗の間引きを指導する後藤さん

野菜苗の間引きを指導する後藤さん(写真提供 : 後藤さん)


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