〜インドの女性支援〜
線香作りの研修を受ける女性たち(写真提供:LIFE)
インドの南部カルナータカ州ホスペット郡では、長年干ばつが続き土地が痩せ、農作物もトウモロコシ、ヒエ、あわなどの穀物類などに限られることから、住民は貧しい生活を強いられています。特に女性は伝統的に弱い立場にあり、家事のほか、貧しい家計を助けるため、農地や鉱山で男性と変わらぬ重労働に従事しています。
日本のNGOである地球の友と歩む会/LIFEは2006年10月から日本政府による協力(注1)も得て、こうした農村での女性の地位向上に取り組んでいます。LIFEインド駐在員の備後洋さんは、「伝統的に女性の地位が低い社会では、女性が活動することに対する抵抗が多く、まずは住民との信頼関係を築くことに力を注ぎました。」と活動当初をふりかえります。そこで活用したのが日本の婦人会に似たSHG(注2)(自助努力グループ)の組織化です。SHGは主に女性20人前後で構成される互助組織であり、インドでは1990年代より徐々に増えはじめました。
活発な議論が交わされるSHGの会合
(写真提供:LIFE)
備後さんたちは、女性の自立のためにはまず彼女たちを組織化した上で定期的な会合を開き、問題意識を持ってもらうことが必要であると考えました。そこでLIFEでは、女性達のSHGへの参加を促すために各村にスタッフが住み込み、水飲み場の修理などをしながら女性たちにこの組織への参加をよびかけました。「当初は本人や家族のなかにも女性がいない時間に誰が家事をするんだといった反対の声が多くありました。しかし、SHGの活動が女性の自立を促し、家計の足しにもなるとわかると様々な会合への参加などにも理解が拡がっていきました。」と備後さんはふりかえります。
SHGのメンバーは、定期的な会合が開かれるように議長を選出し、時間厳守などのルールを決めた上で、より良い生活を送るための話し合いをしています。男性主導の社会にいる女性達も同性同士の場合はうちとけてそれぞれの悩みを打ち明けます。なかでも、最も多い悩みはお金の問題です。貧しい農村であり、生活費にも事欠くメンバーもあれば、より良い生活を目指し、資金の工面の相談をするメンバーもいます。経済的自立をも視野に入れたLIFEの取組では、SHGやインド国内の金融機関から小額の融資を受けるための帳簿付け、お金の貸し借りの方法、さらに実際にお金の運用方法としての線香作りや洋服の裁縫などの技術指導まで行っています。そうして融資を受けた女性のなかには、野菜の販売店や、ティー・ショップを始めた女性もいます。
アンナプールナさんは、電話の普及していない農村でティー・ショップに公衆電話を設置し収益を上げ、事業を拡大しレストランを経営するまでになりました。今ではこのレストランを一家で切り盛りしています。アンナプールナさんは、「SHGは私達の親戚みたいです。」と資金供与のみならず様々なものを彼女にもたらしたSHGについて感慨を込めて話します。
オーナーシップ(自助努力)をも重視するLIFEの取組の結果、それぞれのSHGが自主的にいろいろな課題を克服しよう、より良い生活を目指そうといった機運にはずみがつき、SHG同士の交流も相まって、薪が少なくてすむ改良かまどの導入、トイレや排水設備の設置と使用など生活と密接な部分を改善する活動が始まっています。
備後さんは「このように人が自立するには“気づき”が必要です。誰でも良くしようという気持ちがあるのですが、きっかけとなる。“気づき”がないのです。わたしたちは誰もが持っている内なる力を信じています。」と力強く言います。