〜ボリビアの教育改革〜
算数の授業を見学する堀さん
(写真提供:堀さん)
ボリビアは、教師中心・暗記中心の授業を改革し、子どもを中心とした授業を実施するための教育技術の向上を目指しています。ボリビアの教育状況の改善のため、日本はJICAを通じて2003年から「学校教育の質向上プロジェクト(PROMECA(注))」を行っています。このプロジェクトは、子どもたちが自分で考え、うまくコミュニケーションがとれるような授業を行えるように、教員に対して教育技術を指導するもので、現在、ボリビアの小学校475校、8,500名の教師が参加しています。
堀康廣さんはこのプロジェクトに京都市教育委員会から長期専門家として派遣されています。堀さんは小学校教師を経て大学院や、京都市立教育研究所において教育の研究を行い、ボリビア赴任までは大学で教職論を教えていました。2002年にPROMECAの準備中にボリビアと関わるようになり、短期の専門家を経て、2005年8月からはこのプロジェクトの長期専門家として赴任しています。
堀さんは教育専門家として、学校内外での教員に対する研修を始め、研修教材の制作や、教育指導案作成などについて協力しています。日本とは異なる教育事情に、堀さんは赴任当初はとまどいを感じましたが、ある時からボリビアの教育改革に希望を持ち始めます。それは、ボリビア中央部のコチャバンバ県での研修の際に、ある教師を指導するようになってからです。
コチャバンバ県で小学校教師を務めるビセンテさんは自分の授業に自信を持っていました。しかし、PROMECAの研修の一つである国語の公開授業を実施することになり、その指導案を作成してみると、内容について他の参加者から大きな批判を受けてしまいました。堀さんはビセンテ先生に対し「子どもがどのように活動するかを考えながら計画してみては」とアドバイスし、励ましました。
校内研究に参加する堀さん
(写真提供:堀さん)
公開授業当日は市や県の教育委員会からも多くの参観者がありました。ビセンテさんは緊張してしまいましたが、授業では、指導案どおり子どもたちは積極的に発言し、その意見を授業に取りあげることができました。授業が終わると、子どもや参観者たちから拍手が起こり、ある子どもは「先生、いつもこんな授業をして欲しい。」と言いました。ビセンテさんはこの子どもの言葉に感極まって「ホリ、こんなに興奮をしたことは初めてだ。授業をやって良かった。」と堀さんに言いました。
この時、堀さんはプロジェクトは間違っていなかった、ボリビアの教育は変わると確信しました。その後も、ビセンテさんは授業の改善に努め、翌年、同僚から推薦され校内研究主任になり、県教育委員会の推薦を得て、日本での研修にも参加しました。現在でも毎日頑張って授業をしています。
堀さんは「ボリビアの教師たちは授業をより良いものにしようと努力します。適切な教育方法を教師と分かち合えば、教育の質は向上し、子どもたちは能力を伸ばします。そうした子どもたちが将来のボリビアの発展を担うのです。」と言います。そんな日が来ることを楽しみに、堀さんは、今日もボリビアの学校を飛び回っています。