〜放送技術を指導するシニア海外ボランティア〜
コマーシャル制作の授業を行う大嶋さん
(写真提供:大嶋さん)
大嶋憲輝さんは、民間テレビ局で30年近く携わったコマーシャルや番組制作の経験や技術を活かしたいと思いJICAのシニア海外ボランティアに応募し、2008年1月からモンゴルの首都ウランバートルの国立ラジオテレビ大学に派遣されています。この大学はモンゴル唯一のマスコミ・ジャーナリストを育成する専門の大学です。授業のレベルは比較的高いものの、テキストもなく、黒板に書かれた説明や先生の口述をノートに書き写すというものでした。
大嶋さんは、3年生の授業を担当することとなりました。しかし、モンゴルでは番組制作などに関する教科書は高価で簡単には手に入らず、学生全員が購入できるわけではありません。そこで大嶋さんは、番組制作のノウハウが詰まった手作りの教科書を用意することにしました。
教室内で授業を行う大嶋さんと学生
(写真提供:大嶋さん)
大嶋さんの授業は、今では人気のコースとなり、生徒の出席率は全大学でもトップクラス、91%を超えるほどになっています。また他の多くの教員にも大きな影響を与えています。「私の授業には、生徒のみならず、毎回数名の先生が見学にきています。手作りの教科書を自分の授業でも使いたいという声が先生からも寄せられるようになりました。」と大嶋さんは言います。
モンゴルのメディア産業は、まだ生まれたばかりです。大嶋さんは、ジャーナリズムが社会に与える影響を学生によりよく理解してもらうため、テレビ・コマーシャルを自主制作して市民に呼びかけるキャンペーンについて学ぶ授業を始めました。広大な草原と大自然に恵まれたモンゴルでは、これまで環境問題を深刻に受け止める気運がありませんでした。「社会のあちこちにゴミが散乱している状況については、一人一人は改善したいと考えていても、誰も実際に改善できるとは思っていないという学生の意見が授業で議論になりました。」。そこで、大嶋さんは、学生たちと共に「街を汚さないで」キャンペーンを開始し、環境破壊につながる行為の自粛やモラルの向上のためのテレビコマーシャルを作成することにしました。
自分達が制作したコマーシャルが社会全体に対して環境問題を考える機会となってもらいたいと、学生たちも意気込んでいます。
大嶋さんは「私の授業がモンゴルのメディアのレベルアップにつながること、学生たちが将来ジャーナリストとして、そしてマスコミを支える人材として成長していくことを夢見ています。」と語っています。