日本の大洋州に対する2006年の二国間政府開発援助は、約7,619万ドルで、二国間援助全体に占める割合は1%です。
大洋州地域の島嶼国・地域は、日本にとって太平洋を共有する隣人であるとともに、歴史的に深いつながりがあり、良好な友好関係を有しています。また、これらの国々は広大な排他的経済水域(EEZ (注51))を擁し、日本の遠洋漁業の重要な漁場を提供するとともに海上輸送の要衝でもあり、この地域の平和と繁栄は日本にとって極めて重要です。
大洋州地域は、比較的新しい独立国が多く、社会的経済的に自立した国家の構築が急務となっています。加えて小規模経済、第一次産業依存型経済、国家の地理的拡散性、国際市場へのアクセス困難、自然災害へのぜい弱性、国土喪失の危機など島嶼国特有の共通問題を有しています。このほか、フィジーにおける政変や、ソロモンにおける政情不安など民族・部族間の対立を基礎とする問題、トンガにおける暴動などといった民主化に関する問題も抱えています。日本は、このような事情を踏まえ、大洋州諸国の良きパートナーとして各国の個々の事情および地域共通の問題を考慮した援助を実施しています。
大洋州における政治的安定と自立的経済発展のためには、社会・経済面におけるぜい弱性の克服や、地域の協力が不可欠です。日本は、大洋州諸国の首脳で構成される地域協力の枠組みである太平洋諸島フォーラム(PIF (注52))との協力を進めてきており、1997年から3年ごとに、これまで計4回、日本とPIF諸国との首脳会議である太平洋・島サミットを開催しました。
気候や海洋性などの点で大洋州諸国と共通の特徴を持つ沖縄において、2006年5月に開催された第4回太平洋・島サミットでは、PIFの自助努力および域内協力の指針である「パシフィック・プラン」と、その自助努力を後押しする日本の支援策を2つの柱とする、日本とPIF間の新たな協力の枠組みである「沖縄パートナーシップ」を採択しました。日本の支援としては、「経済成長」、「持続可能な開発」、「良い統治」、「安全確保」、「人と人との交流」の5重点政策目標の下、当面の目標として、2006年から向こう3年間で総額450億円規模の贈与を中心とした協力を太平洋島嶼国の自助努力に対する支援として行うこととしています。このほか、防災や気候変動への適応等への協力についても重視しています。
日本は、第4回太平洋・島サミットで発表された5重点政策目標を踏まえ、各国の国家開発計画や発展段階に応じた需要や諸事情に配慮した援助を行っています。例えば、ソロモンにおいては、長期間内政が混乱していましたが、近年治安が著しく向上したことから、2005年からの青年海外協力隊派遣の再開(注53)やインフラ整備等を通じ、同国の国家復興を支援しています。また、2007年4月に起きた北西部地震・津波災害に対し、日本は緊急援助物資、および国連児童基金(UNICEF)並びに国際赤十字・赤新月社連盟(IFRC)を通じた緊急無償資金協力の実施、さらには今後の復興支援のための調査を国際協力機構(JICA)にて行い、無償資金協力による被災した病院の復興支援の決定、青年海外協力隊(JOCV)の派遣の実施等、間断なく復興段階につなげるべく支援を行っています。山間部が多く、多民族国家のパプアニューギニアにおいては、テレビ番組による授業改善計画プロジェクトにより都市から隔絶した遠隔地の小中学校の授業の質の改善を支援する等、都市と地方の格差是正を支援しています。
各国ごとにきめ細かな援助を行う一方、大洋州島嶼国は環境、保健分野等において共通の開発課題を抱えており、これら大洋州島嶼国が持続可能な発展を達成するためには、大洋州島嶼国個別への協力のみならず、大洋州地域としてとらえ、より広域的な利益をも勘案した地域協力を行う必要があります。大洋州地域を広域的にとらえた地域協力も、遠隔教育、廃棄物対策、感染症対策といった分野において展開しています。具体的には、遠隔教育については、フィジーに本部がある南太平洋大学(USP (注54))を拠点に、USPへの遠隔教育ネットワーク施設支援を通じて、島嶼国の人々に広く高等教育を受ける機会を提供しています。廃棄物対策としては、サモアにある地域国際機関の太平洋地域環境計画(SPREP (注55))への支援として、無償資金協力によりSPREP訓練・教育センターを建設したほか、SPREPへの専門家派遣や廃棄物対策研修等を行い、島嶼国を対象とした廃棄物対策マスタープランの作成を実施することによって地域の環境問題解決に貢献しています。また、感染症対策への支援としては、域内の予防接種事業強化のため、ワクチン供与、低温流通体系の保守、医療廃棄物の安全廃棄を含む安全注射を中心とした予防接種拡大計画(EPI)の協力を世界保健機関(WHO)やUNICEF等とともに実施し、地域のはしかおよびB型肝炎における予防接種率の向上、フィラリア撲滅AHIV/エイズ予防に向けた支援を行っています。これらの分野のほかに、災害の被害が多い大洋州地域において防災対策等の地域協力も検討しており、JICAで行った援助需要調査を踏まえ、協力内容を具体化する予定です。