(5) エネルギー
< 実績 >

  2006年度においては、エネルギー分野に対する円借款の実績は約1,646億円(8か国)、無償資金協力は約43億円(6か国)となりました。また、技術協力では352人の研修員受入、99人の専門家を派遣しました。

< 現状 >

  開発途上国においては、経済発展を実現して生活水準を向上させるために、安定したエネルギー供給を確保することが課題となっています。開発途上国では、近代的なエネルギー・サービスを享受できない人々が約25億人いるといわれています(注144)。近代的なエネルギー・サービスの欠如は、産業の未発達とそれに伴う雇用機会の喪失による貧困化、医療サービスや教育を受ける機会の制限など、経済・社会における生活の質的向上を妨げる要因となります。
  また、今後、世界のエネルギー需要はアジアをはじめとする開発途上国を中心に増大することが予想されています。これに対し、エネルギーの安定供給や環境への適切な配慮なしには、エネルギー需給のひっ迫と価格高騰、二酸化炭素排出の増加といった問題が顕著になる可能性があり、ひいては開発途上国の持続可能な開発並びに日本および世界の経済・環境に影響が出ることが懸念されます。
  このようにエネルギー問題は、貧困、持続可能な開発、環境問題といった様々な問題と関連する地球的規模の課題です。

< 日本の取組 >

  日本は、開発途上国の持続可能な開発および日本自身のエネルギー確保の観点から、開発途上国におけるエネルギー供給のための協力を各国の事情に合う形で実施しています。具体的には、開発途上国に対する近代的エネルギー・サービス提供による貧困対策や、産業育成のための電力の安定供給に取り組んでいます。また、同時に、エネルギー・ロス改善、エネルギー利用効率化および再生可能エネルギーを活用した発電施設などのエネルギー関連インフラの整備といった、環境に配慮したエネルギー分野の協力も積極的に進めています。
  政府開発援助を通じては、特に他の公的資金や民間部門での対応が難しい案件、エネルギー効率の向上および省エネルギーの推進、再生可能エネルギーの利用促進などに資する案件について協力を行っています。また、資源国に対しては、その国の外貨獲得源である資源開発を支援し、自立的発展の促進を図り、資源分野における関係強化を図っています。
  2006年度は、インドのバンガロール都市圏の配電網設備を高度化するため、円借款の供与を決定しました(注145)。インドでは、深刻な電力不足に加えて、頻繁に生じる停電が大きな問題となっています。日系企業を含む多くの企業が集積し、インド有数の産業拠点として近年急速に発展を遂げているバンガロール都市圏でも、停電等が経済活動や生活水準向上の障害となっています。日本は、配電自動化システムの整備を支援し、電力を安定的に供給することで、地域の経済発展と生活水準向上への貢献を図っています。
  また、環境への負荷を考慮し、発電において二酸化炭素を排出しない水力や地熱、太陽光エネルギーといった再生可能エネルギーを利用した協力も進めています。2006年度は、ケニアの水力発電所建設等に対して、円借款の供与を決定しました。ケニアは石炭・石油等の燃料資源がないほか、発電所の老朽化が進んでおり、その上電力輸入先の隣国ウガンダでも電力不足となっているなど、電力需要への対応が切迫しています。貴重な水力発電資源の、より一層の有効活用を通じて、電力供給が拡大されることが期待されます。また、無償資金協力では、カンボジアに対して、再生可能エネルギーである水力による、小規模発電設備建設を支援しています(注146)。これは、ベトナム国境山間部のセンモノロム市では公共の電力供給がなく、慢性的な電力不足に陥っており、また電気料金もプノンペンの約4倍と低所得層には支払が不可能な水準にあったことが背景としてあります。
  このほか、日本は、エネルギー管理、エネルギー・ロス改善、エネルギー利用効率化および再生可能エネルギーといった分野の技術移転や人材育成を行っています。
  フィリピンでは、再生可能エネルギーの導入により、離島やへき地の電化に取り組んでおり、日本は小規模水力発電や太陽光発電に関する技術移転や能力開発支援を進めています(注147)

コラム 14 大産油国サウジアラビアが省エネルギーに挑戦!

インドネシア地方電化事業(円借款、1993年度、1996年度、150.9億円)

  1992年12月時点において、インドネシア・ジャワ島の村落電化率(注148)は約60%であり、それ以外の島は30%強と格差が生じていました(注149)。この格差の改善に向け、インドネシア政府は独自に取り組むとともに、日本も円借款を通じて支援を行いました。
  こうした日本の支援(1,562村落の電化を達成)も含む全国規模の電化促進への努力の結果、2002年にはジャワ島の村落電化率は98.6%に、それ以外の島は73.9%まで向上し、格差は大きく緩和されました(注150)。さらに電化が進んだことにより、テレビ・ラジオの普及が促進され、情報の取得が容易になったことや、夜間の学習が可能となり、学習環境が改善されるなど、様々な効果が波及しています。



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