2006年度の食糧援助の実績は121億円(17か国)、貧困農民支援の実績は約48億円(16か国)、水産無償の実績は約46億円(6か国)です。
世界には約8億5,000万人の飢餓にひんする人がいます(注141)。このうち約3億人は子どもであり、5秒に1人の子どもが飢餓に関係する理由で亡くなっているといわれています。こうした状況を改善するために、ミレニアム開発目標(MDGs)では、2015年までに飢餓に苦しむ人口の割合を1990年の水準の半数に減少させるとの目標が掲げられています。また、紛争、自然災害、経済危機の発生などにより、食料支援の必要性は高まっています。
世界では、栄養不良に陥っている子どものうち、約1億7,000万人が学校で食事をとることができず、約1億3,000万人が学校に通っていません。
日本は、食料不足に直面している開発途上国に対して食糧援助を行うとともに、開発途上国の食料生産性の向上に向けた努力を中長期的に支援する取組を並行して進めています。食糧援助については、飢餓への対応として人道的見地から実施しており、アフリカなど食料不足に直面している国を対象として、2006年度には食糧援助(KR)により、総額120億7,500万円の支援を行いました。このうち、二国間支援を通じて、マリ、エチオピア、エリトリア、アンゴラ、ネパール、ハイチ等に対して49億5,500万円の支援を実施し、国連世界食糧計画(WFP)および国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)経由では、スーダン、ソマリア、ケニア、ウガンダ、アフガニスタン、東ティモール、フィリピン(ミンダナオ)、パレスチナ自治区およびレバノン・シリア・ヨルダンにおけるパレスチナ難民に対し71億2,000万円の拠出を行いました。特にWFPに対しては、積極的に貢献しており、2006年はWFP経由で実施した食料援助を含め約7,230万ドルの拠出を行い、第7位の援助国となっています。
緊急の場合に、生命の危機にひんしている人々に対する無償の食料配給は重要です。一方で、受益者の自立を支援する観点からは、食料配給を通じた教育や職業訓練プロジェクトが重要です。学校給食を実施することで、児童の空腹や栄養状態が改善され、学習に専念できるようになるため、授業への出席率および理解度が向上します。そして出席した児童に対して、家に持ち帰るための食料も併せて配給することにより、家族の生活補助と、家族の教育に対する理解促進に役立っています。特に女児に対する学校給食および食料の配給は、女児の就学率向上に役立っています。日本は、WFPが実施している教育普及のための学校給食を支援しています。例えばアフガニスタンでは、学校給食を実施して初等教育の普及に努めている上、特に女児に対して、家に持ち帰るための油などを配給することにより、男児に比べて遅れがちな女児の就学向上を支援しています。また、WFPは、食料配給のときに保健教育を施したり、職業訓練を兼ねたインフラ整備を行い、食料を労働の対価として配給するプロジェクトを実施しており、日本の支援も活用されています。
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食料安全保障の取組
日本は、食料安全保障への短期的取組として、食料事情を改善すべく、1968年度から一貫して食糧援助を実施しているほか、中長期的取組として、開発途上国による食料増産に向けた自助努力を支援することが重要という考えから、1977年度から貧困農民支援(2KR(注142))を実施しています。また、農業生産量の増大のためには、かんがい施設の整備や食料生産技術の向上のための技術協力なども重要であり、日本は、円借款、無償資金協力、技術協力など様々な援助形態を用いて協力を行っています。最近の日本による新たな取組としては、食料安全保障の確保に向け不可欠な食料・農業統計情報にかかる人材育成や情報基盤の整備を行う「ASEAN食料安全保障情報システム(AFSIS (注143))」の支援や、東アジア地域の食料安全保障の強化および貧困緩和を図るため、緊急時のための米備蓄に関するパイロット・プロジェクトを行っています。