世界の人口は増加の一途をたどり、2007年7月には67億人、2050年には92億人に達することが見込まれています(注138)。世界の人口平均増加率が年1.1%であるのに対して、一般的に開発途上国の中でも貧しい国ほど人口増加率が高く、人口増加が貧困・失業、飢餓、教育の遅れ、環境悪化などの問題に大きな影響を与えており、対応が急務となっています。例えば、一人当たりの国民総所得(GNI)が700ドル前後のブルンジ、コンゴ民主共和国、ギニアビサウでは、人口増加率はそれぞれ3.7%、3.1%、2.9%となっており、紛争が続くソマリア、アフガニスタンではそれぞれ3.1%、3.5%となっています。
人口問題には、人口の構成要因である一人ひとりの人間が、妊娠・出産にかかわる健康状態・権利を確保し、どのように子どもを産み育てるかという個人レベルの問題と、人口数の増加・減少による貧困、食料・水・エネルギー不足、環境劣化問題、人口移動といった国家レベルの問題の両面への対応が求められます。これらの取組においては、人口分野での専門知識や国際的ネットワークを有する国連人口基金(UNFPA (注139))や国際家族計画連盟(IPPF (注140))といった国際機関などを通じた支援が有効です。
日本は2006年度にはUNFPAに対して約38億円、IPPFに対して約15億円の拠出を行いました。これらの機関は、妊産婦の健康改善、母子保健の推進のために支援を行うほか、開発途上国の国勢調査など人口関連のデータ収集・分析、女性の能力強化、世界全体で12億人を超えるといわれる思春期の若者を対象とした啓もう活動などを行っています。
また、2007年3月には、ブルンジ、パレスチナ、ネパールへのUNFPA緊急支援プロジェクトに対し、緊急無償資金協力により、緊急産科治療に必要な診察用ベッド、分べん台、手術台、分べんに要する器具や医薬品等を供与しました。これは、出産への支援という妊娠・出産にかかわる健康状態・権利の重要な局面に関する支援といえます。