(6) 政府開発援助以外の公的資金(OOF)および民間部門との連携
< 現状 >

  世界全体の開発途上国への資金の流れを見ると、2005年には政府開発援助が全資金流入量の35%、それ以外の公的資金(OOF(注41))や民間資金といった政府開発援助以外の資金は全体の5分の3となっています(DAC統計)。このような資金の流れからも分かるように、開発のためには、政府開発援助とともにその他の公的資金や民間資金が活用されることが重要です。
  特に、東アジア地域を中心に、インフラ整備・維持管理のために必要となる膨大な資金需要が存在します。これに対しては、開発途上国政府の財政資金や、援助国からの公的資金だけでは十分対応できません。官民のパートナーシップ(PPP (注42))を進め、民間資金などとの適切な役割分担の下で、官民協力によるインフラ整備を促進していくことが一層求められています。実際、経済社会インフラの整備に関しては、最近では開発途上国でも、民間部門の資金・技術やイニシアティブを活用した取組がなされてきています。

< 政府開発援助以外の公的資金の役割 >

  日本の民間企業が開発途上国において事業の展開を図る場合、外貨交換や送金に対する規制、法制度変更や、戦争・内乱・政治不安などといったリスクが伴います。そのため、民間金融機関からの融資を受けにくく、積極的な事業展開を図りにくい面があります。
  このような困難を取り除くために、JBICや日本貿易保険(NEXI (注43))、アジア開発銀行、世界銀行グループ(注44)のような公的機関は、これら海外投資に対する融資や、保険の引受け、民間金融機関と協調しつつ巨額の協調融資を行うなどして、日本企業の開発途上国への事業展開を支援しています。この資金は、政府開発援助より譲許性が低く、政府開発援助には該当しない公的資金(OOF)と呼ばれています。
  このような公的資金を活用することで、日本企業の海外事業展開を支援するとともに、融資の受入国では、政府開発援助と同じく、経済成長のためのインフラの整備が促進されることとなります。特にBOT(注45)方式で実施されるプロジェクトは、プロジェクトの成果物が最終的に受入国のものとなります。したがって、受入国のその後の経済発展につながるインフラ整備に資することとなり、民間資金の流入を促す役割を果たします。
  具体的な動きとしては、2006年1月、60以上の民間企業、関係団体からなる「アジアPPP推進協議会」が設立され、電力、都市交通、上下水道、情報通信技術(IT)・公共サービス等の分野で日本の技術や知識を活用し、アジアを中心とする開発途上国のインフラを整備できるように積極的に取り組んでいます。2007年3月には、インドネシア、ベトナム両国において、日本政府とアジアPPP推進協議会の共催による官民一体となった政策対話(PPPフォーラム)を開催しました。両国におけるフォーラムは共に盛況で、高い関心が示されるとともに、日本と両国政府との間で協力の覚書が交わされるなど成果も上がっています。

日本・ベトナム政府間でMOU(覚書)を締結
日本・ベトナム政府間でMOU(覚書)を締結
(写真提供:経済産業省)


< 民間・大学等との連携推進の取組 >

  政府開発援助における民間部門との連携を強化する動きも進められています。政策レベルでは、外務省と経済団体、商社、コンサルティング会社等経済界の間で随時意見交換が行われ、政府開発援助と民間企業の活動の効果的な連携の方法について検討が進められています。
  政府開発援助の実施に際しては、JICAでは、開発途上国で実施している技術協力プロジェクトに対し、民間の活力、創意、ノウハウをより一層いかせるように「提案型技術協力(注46)」を実施しています。2006年度は、インドネシアの「小地域統計情報システム開発プロジェクト」、スリランカの「南部地域の村落生活向上プロジェクト」が新たに開始されました。このほか、民間団体に事業を委託するプロジェクトにおいては、新規に69件(2005年度は56件)を契約して、民間の活力を積極的に活用しています。こうした業務実施契約に基づく技術協力プロジェクトには、非政府組織(NGO)や大学へ委託するケースも見られるようになり、多様な団体のノウハウの活用が進んでいます。

インドネシアの小地域統計情報システム開発プロジェクトで研修中の受講生たち
インドネシアの小地域統計情報システム開発プロジェクトで研修中の受講生たち
(写真提供:JICA)

  円借款においても、大学等との連携が進んでいます。例えば、中国における「寧夏回族自治区水環境整備計画」では、島根大学が寧夏回族自治区における水セクター(再生水)の現状調査および研修計画作成等への知的支援を行いました。また、日本国内で研修を行う予定ですが、これについても島根大学の協力により、島根県をはじめ福岡市等での研修を予定しています。このほかにも、スリランカでは、北海道大学から実施済みの円借款事業における感染症対策について、改善や更なる推進を図るための提言がなされました。
  JBICは、開発途上国で多様化する支援の必要性をきめ細かくとらえるため、2001年度から提案型調査、発掘型案件形成調査を導入しています。提案型調査は、日本国内の団体などからの提案に基づき、円借款事業に役立つ知見や情報の蓄積を図るものです。これに対し発掘型調査は、同じく日本国内の団体などからの提案に基づき、将来の具体的な支援案件を発掘・形成することが目的です。2006年度には、提案型調査については東洋学園大学の知見を活用した中国の「貧困大学生援助策の実態および支援体制構築」など5件、発掘型調査についてはイラクの「クルド地域における水力発電案件」など14件を採択しました。また、2006年度から、提案型調査については、国・地域や分野も含めた、テーマのアイデア自体を提案団体が提案する「フリーテーマ」枠を導入しています。


<< 前頁   次頁 >>