2006年度のIT分野の実績は、9億円(1か国)の無償資金協力、262億円(4か国)の円借款を実施、技術協力では、257人の研修員受入、35人の専門家派遣、1人の協力隊員を派遣しました。
ITの普及は、産業の高度化、経済の生産性の向上などを通じて持続的な経済成長の実現に寄与します。またITの積極的な活用は、政府の情報公開の促進や、メディア支援を通じた民主化の土台となるガバナンス改善、利便性・サービス向上による市民社会の強化といった面でも重要な意義を持っています。
この反面、ITを活用可能な人々とそうではない人々との格差が顕在化してきています。この情報格差(デジタル・ディバイド)は、先進国・開発途上国間の経済的格差を一層増幅させ、国際社会の安定を揺るがしかねない問題です。近年その格差の解消を図ることが極めて重要な課題となっています。
日本は2000年7月のG8九州・沖縄サミットにおいて「国際的な情報格差に対する我が国の包括的協力策について」を発表しました。ITは基本的に民間主導で発展する分野であり、上記協力策の大部分は政府開発援助以外による協力が中心となり、政府開発援助による協力は、開発途上国におけるインフラ構築や人材育成など、民間ベースにはなじまない分野に関する協力に充てています。また、開発途上国のテレビ、ラジオ、印刷メディア等に対する支援も行っています。
→ 下欄を参照してください
テレビ、ラジオ、印刷メディアへの支援
2003年から2005年までの情報分野への支援額(約579億ドル)のうち、約41%の約234億円はテレビ、ラジオ、印刷メディアへの支援です(注22)。これらは、いわゆるIT支援というイメージからは外れますが、開発途上国の状況に応じた情報関連インフラを整備する重要な取組であり、人々が流通する情報を自由に取得することを可能にすることは、民主化の前提となります。
2007年7月、日本はウガンダの中波ラジオ放送網整備計画に対して、無償資金協力の供与を決定しました。ウガンダでは、ラジオ受信機の世帯普及率が76.5%とテレビ(7.5%)に比べて非常に高い状況です。しかし、内戦や落雷の被害から、1970~1980年代に整備された機材が老朽化しており、中波放送のサービスエリアは当初の約90%から約25%へ大幅に縮小しています。日本の支援により、サービスエリアは77%に回復し、1,415万人が新たに中波放送を受信することが可能となる予定です。
日本は、2003年3月にアジアにおけるブロードバンド環境の整備に向けた行動計画として、「アジア・ブロードバンド計画」を策定し、2006年8月には、計画の改定を行いアプリケーションや人材育成分野における協力を重点事項としました。本計画は、2010年を目標年次とし、アジアのすべての人々がブロードバンドにアクセスできることなど、7つの事項の実現を通じて、アジアが世界の情報拠点となることを目指したものです。日本は、本計画の推進に向け、これまでにタイ、マレーシア、ベトナム、インドネシア、カンボジア、フィリピン、中国、インドとの間で二国間の協力を、日本・中国・韓国の3か国での協力を行うことを合意しています。これらの合意に沿って各国との政策対話を実施し、相手国の要望などの把握に努めるとともに、(1)ベトナム、イラク、カンボジアおよびバングラデシュにおけるインフラ整備や、(2)タイ、シンガポール等のアジア諸国との間でのブロードバンドネットワークを利用した共同実験を通じた、アプリケーション・コンテンツ・共通的基盤の整備-を実施しています。
また、2007年5月に公表された「アジア・ゲートウェイ構想」においても、世界の成長を支える「開かれたアジア」の維持発展に向けた「アジアの共通発展基盤の整備」が挙げられており、本構想の実現にも資するべく、今後もIT基盤の整備に取り組んでいきます。
パキスタン「電気通信網拡充計画」(1990年度、円借款)
本事業では、通信サービスの量的拡充、質的改善を図り、商業・産業活動の活性化に寄与することを目的に、パキスタン政府にて実施予定であった電話回線の増設にあわせて国内伝送路(光ケーブル)および国際通信施設の整備・拡充を支援しました。その結果、電話普及率が上昇したほか、受益者調査(住民40世帯、企業89社対象)では、回答者ほぼ全員から、本事業により通信状況が改善し、家族とのコミュニケーションやビジネスにプラスの効果があったとの意見が寄せられました。