(2) 政策立案、制度整備
< 現状 >

  開発途上国の持続的成長のためには、経済社会基盤の整備とともに政策立案、制度整備や人づくりといった観点からの支援が必要です。政府開発援助(ODA)大綱は、開発途上国の発展の基礎となる人づくり、法・制度構築に対する支援を、重要政策と位置付けています。これを受け、政府開発援助に関する中期政策では具体的な措置として、汚職の撲滅、法・制度の改革、行政の効率化・透明化、地方政府の行政能力の向上を支援する方針を定めています。

< 日本の取組 >

  制度政策支援の一環として、日本は2007年3月、前年に引き続き、インドネシアに対し、開発政策借款(DPL (注8))を供与しました(世界銀行、アジア開発銀行との協調融資:日本1億ドル、世界銀行6億ドル、アジア開発銀行2億ドル)。開発政策借款は、インドネシア政府によるマクロ経済の安定化、投資環境の改善、公共財政管理および汚職撲滅等のガバナンスの分野における改革の推進および貧困削減等の改革努力を支援するものです。
  このほか、日本はタンザニアにおいて、貧困削減財政支援に参加しており、ノンプロジェクト無償にて2004年から2007年にそれぞれ5億円、5.45億円、5.45億円、6億円の資金拠出を実施しています。こうした開発途上国の財政に対する支援においては、その後の財政の状況をしっかりと管理・監視していく必要があります。このような公共財政管理能力の向上に向け、日本はタンザニアにおいて開発調査を実施しました。本開発調査では、タンザニアで策定、導入された公共財政管理改革プログラムおよびその実施規定をもとに、同国政府の会計局および関連機関の活動分析を行い、試験的な人材育成や業務改善等に協力しました(注9)
  日本は、1996年のG7リヨン・サミットの際に「民主的発展のためのパートナーシップ(PDD (注10))」を発表し、これまでも法制度、行政制度、公務員制度、警察制度などの各種制度づくり支援、選挙支援、市民社会の強化、女性の地位向上支援などの取組を行ってきました。2006年度には、アジアを中心に、中国、モンゴル、カンボジア、ウズベキスタン等で法制度整備支援を行ったほか、アフリカのケニアでも同様の支援を行っています。また、行政支援としては、汚職の防止や統計能力の向上、地方行政能力の向上を図り、タイ、カンボジア、バングラデシュ、パキスタンといったアジア諸国のみならず、パラグアイ、ホンジュラス等中南米やタンザニア、ザンビア等アフリカ諸国への協力も行っています。このほか、警察支援や選挙支援、市民社会の強化、女性の政治参加の拡大等を支援しています。

< 良い統治(グッドガバナンス)への様々な取組 >

法制度整備支援
  市場経済への移行を目指して各種法制度の整備が課題となっているベトナム、カンボジア、ウズベキスタンなどの諸国に対し、2006年度も引き続き、民法、民事訴訟法などの法案起草・改正、立法化への支援および法曹人材の育成のための法整備支援を実施しています。これらの支援の結果、ベトナムでは民事訴訟法等が整備され、2007年1月にベトナムが世界貿易機関(WTO (注11))に加盟する一助となりました。カンボジアでは、2006年7月に成立・公布された民事訴訟法が2007年7月から適用されており、民法も2007年の国会で成立する見込みとなっています。そして、成立した法律を適切に運用する人材を育成するため、カンボジアの王立裁判官・検察官養成校への支援を行っており、2006年度末までに第1期生55人が同校を卒業して活躍しています(注12)。また、ウズベキスタンでは、倒産法の解釈・運用を統一するための倒産法注釈書発刊に対する支援を行ってきており、2007年3月に発刊されるなどの成果が上がっています。

カンボジア法整備支援での模擬裁判オープニングセレモニーの様子
カンボジア法整備支援での模擬裁判オープニングセレモニーの様子
(写真提供:法務省)

  国連アジア極東犯罪防止研修所(UNAFEI (注13))では、2006年10月から11月にかけて、汚職防止刑事司法支援研修を実施し、アジアを中心とする開発途上国14か国からの参加を得て、汚職の現状および刑事司法上の対応に関する問題点と対策等の検討を行いました。

警察能力向上等への支援
  国内治安維持の要となる警察機関の能力向上については、制度づくりや行政能力向上への支援など人材育成に重点を置きつつ、日本の警察による国際協力の実績と経験を踏まえた知識・技術の移転と、施設整備や機材供与を組み合わせた支援を実施しています。日本は2001年から「インドネシア国家警察改革支援プログラム」として専門家の派遣や研修員の受入を行っています。インドネシアでは、2000年までに国家警察が国軍から分離・独立し、市民警察としての定着を目指して警察改革が促進されています。こうした動きを支援するために、これまで200名を超えるインドネシア警察官を研修員として日本に受け入れており、研修参加者は日本の警察の「国民のための警察」に対する姿勢や事件捜査、鑑識技術等を学びました。このほか無償資金協力により、無線機器や交番、鑑識機材などを供与しており、無線通信網の整備により市民からの通報に迅速な対応が可能となり、また物証に基づく薬物捜査技術が向上するなど、市民の安全に貢献する支援を行っています。
  また、ブラジルに対しては、引き続き交番制度の技術移転を行っています。具体的には、同国政府からの要請に基づき、専門家の派遣や研修員の受入を行っています。2005年からは、交番の設置、運用を進めていたサンパウロ州において、これまでの経験をいかし、交番制度の運用を向上させるため、「ブラジル地域警察活動プロジェクト」を開始しました。サンパウロ州での取組により、2006年度中には、ブラジルから10名の研修員を受け入れ、警察署や交番での地域警察活動の様子を紹介しました。

サンパウロ市内の交番
サンパウロ市内の交番

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