第II部 2006年度の政府開発援助実績

(C)三井昌志
(C)三井昌志

第1章 実績から見た日本の政府開発援助

日本の協力で建てられたブルキナファソのスミガヤ村小学校の子どもたち
日本の協力で建てられたブルキナファソのスミヤガ村小学校の子どもたち
(写真提供:今村健志朗/JICA

  2006年の日本の政府開発援助(ODA (注1))実績は、支出純額(ネットベース)で、二国間政府開発援助が約73億1,309万ドル(約8,512億円、前年約104億621万ドル(約1兆1,457億円))(注2)、国際機関に対する出資・拠出等が約38億7,398万ドル(約4,509億円、前年約27億4,037万ドル(約3,017億円))、政府開発援助全体では対前年比14.9%減の約111億8,707万ドル(円ベースでは対前年比10.0%減の約1兆3,022億円)となりました。
  また、政府貸付等の回収額を算定に入れない支出総額(グロスベース)では、二国間政府開発援助が約132億4,130万ドル(約1兆5,413億円、前年約159億4万ドル(約1兆7,506億円))で、政府開発援助全体では対前年比8.2%減の約171億1,528万ドル(円ベースでは対前年比2.9%減の約1兆9,922億円)です。

< 実績の分析 >

  現在日本の政府開発援助予算はピークであった1997年度に比べ38%減となっています。こうした中、日本の2006年の政府開発援助実績(支出純額(ネットベース))は、経済協力開発機構開発援助委員会(OECD-DAC(注3)加盟国では米国、英国に続く第3位となりました(注4)。日本が第3位以下(注5)になるのは、1982年以来24年ぶりのことです。2005年に比べ全体として約14.9%減少した要因は、2005年に比べ、2006年度の政府開発援助一般会計予算が減額となったことに加え、スマトラ沖大地震等への支援の一環としてインドネシアに対して行われた債務支払猶予が終了し、政府貸付等の回収額が増えたこと等から、「二国間政府貸付等」の支出純額(注6)が前年比92.0%減となったこと、また、イラクやインド洋津波災害の緊急援助および、主にイラクに対する債務救済の実績が減少したこと(注7)が主な要因です。
  2006年政府開発援助実績(ネットベース)の内訳としては、二国間政府開発援助が全体の約65.4%、国際機関を通じた政府開発援助が約34.6%となっています。二国間政府開発援助については、開発途上国との協議を経て援助を実施するため、日本と被援助国との関係強化に貢献することが期待されています。また、国際機関を通じた政府開発援助は国際機関の専門的知見の活用、政治的中立性の確保、政府ベースの援助が届きにくい国・地域への支援が可能であるなどのメリットがあります。そのため日本は、二国間援助および国際機関を通じた支援を柔軟に使い分けるとともに相互の連携を図り、適切に援助が供与されるよう努力しています。

図表II-1 2006年の日本の政府開発援助実績

図表II-1 2006年の日本の政府開発援助実績

< 二国間政府開発援助の実績 >

  二国間政府開発援助の内訳を見ると、無償資金協力として計上された実績は約50億4,710万ドル、政府開発援助実績(ネットベース)全体の45.1%となっています。このうち債務救済は約35億4,408万ドル、約31.7%を占め、今回新たに項目を設けた「国際機関を通じた贈与」が約3億7,650万ドル、約3.4%、上記項目を除いた無償資金協力として日本が供与した金額は約11億2,652万ドル、10.1%となっています。新規に項目を設けた「国際機関を通じた贈与」は、従来「国際機関に対する出資・拠出等」の項目に計上していたものの一部で、受取国を特定して資金を拠出するものに対しては、2006年実績から二国間政府開発援助として計上することとしたものです(注8)。これは、日本の援助により各被援助国に資する額をより正確に把握すること、DACの統計規則では従来そのような計上方法が推奨されており、他の援助国はそれに従っていることから、日本と他国との実績比較を適正に行うことを目的としています。また、技術協力は約26億1,322万ドル、23.4%、政府貸付等は約▲3億4,723万ドル(注9)、債務救済を除いた政府貸付等は約1億9,431万ドルとなっています。
  二国間政府開発援助(東欧および卒業国を含む)を地域別(注10)に見ると、アジアは全体の26.8%、約20億195万ドル(約2,330億円)、うち債務救済分は約2,302万ドル(約27億円)、中東は全体の14.0%、約10億4,900万ドル(約1,221億円)、うち債務救済分は約7億5,845万ドル(約883億円)です。アフリカは全体の34.2%、約25億5,819万ドル(約2,978億円)となっており、うち債務救済分は約20億4,063万ドル(約2,375億円)で、ナイジェリアへの約19億3,271万ドル(約2,250億円)の債務救済が大きな割合を占めています。中南米は5.8%、約4億3,152万ドル(約502億円)、うち債務救済分は約1億8,044万ドル(約210億円)、大洋州は1.0%、約7,619万ドル(約89億円)、欧州は2.9%、約2億2,005万ドル(約256億円)となっています。
  また、債務救済を除くと、アジアは全体の44.2%、アフリカは全体の11.6%、中東は6.5%、中南米は5.6%、欧州は4.9%、大洋州は1.7%となります。


図表II-2 日本の二国間政府開発援助の形態別実績

図表II-2 日本の二国間政府開発援助の形態別実績


図表II-3 日本の政府開発援助予算の推移・他の主要経費の推移

図表II-3 日本の政府開発援助予算の推移・他の主要経費の推移


図表II-4 日本の二国間政府開発援助の地域別配分の推移(支出純額ベース)

図表II-4 日本の二国間政府開発援助の地域別配分の推移(支出純額ベース)


図表II-5 DAC主要国の政府開発援助実績の推移(支出純額ベース)

図表II-5 DAC主要国の政府開発援助実績の推移(支出純額ベース)


図表II-6 DAC主要国の政府開発援助実績の推移(支出総額ベース)

図表II-6 DAC主要国の政府開発援助実績の推移(支出総額ベース)


図表II-7 DAC諸国における政府開発援助実績の国民一人当たりの負担額

図表II-7 DAC諸国における政府開発援助実績の国民一人当たりの負担額


図表II-8 DAC諸国における政府開発援助実績の対国民総所得(GNI)比

図表II-8 DAC諸国における政府開発援助実績の対国民総所得(GNI)比


図表II-9 日本の政府開発援助実績と対国民総所得(GNI)比率の推移

図表II-9 日本の政府開発援助実績と対国民総所得(GNI)比率の推移


図表II-10 日本の二国間援助に占める後発開発途上国(LDC)向け援助額

図表II-10 日本の二国間援助に占める後発開発途上国(LDC)向け援助額


図表II-11 日本の二国間援助に占める後発開発途上国(LDC)向け贈与の割合

図表II-11 日本の二国間援助に占める後発開発途上国(LDC)向け贈与の割合


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