第3章 政府開発援助改革の進展

ネパールの女性の職業技術を支援するNGOで糸を紡ぐ女性たち
ネパールの女性の職業技術を支援するNGOで糸を紡ぐ女性たち (写真提供:中山美奈子)

  前章(注1)で見たような援助の国際的な環境の中、日本は、気候変動問題への対応やアフリカ支援などの従来日本が深く関与してきた分野で、存在感のある協力を推し進めることが求められています。折しも、2008年は、日本において、G8開発大臣会合(4月)、第4回アフリカ開発会議(TICAD IV)(5月)、G8北海道洞爺湖サミット(7月)が開催されます。日本が、財政的な制約(注2)の中で、国際協力においてリーダーシップを発揮していくためには、企画・立案から実施段階まで政府開発援助の改革を着実に実行することが重要な課題となっています。2006年8月の外務省における国際協力局創設を一つの節目として、2008年10月の新JICA設立も念頭に置き、改革の成果を開発途上国の現場で具体的に実現していくことが求められています。

1. 戦略性の強化(「選択と集中」)

(1) 外交政策を踏まえた国際協力の推進
  日本の開発援助は、途上国の経済社会の向上に協力することを通じて、日本の外交基盤の形成にも役立っています。したがって、外交政策を念頭に置き、開発途上国の援助需要を踏まえ、戦略的に国際協力の企画・立案を行い、案件の実施に確実に反映させていくことが重要です。2006年2月、「海外経済協力に関する検討会」(注3)は最終報告書において、政府開発援助をはじめ、その他政府資金さらには民間資金の動員まで視野に入れた海外経済協力の戦略性を強化するために、「司令塔」を設置する必要があることを指摘しました。それを受けて、2006年4月、内閣総理大臣を議長とする「海外経済協力会議」(注4)が内閣に設置され、海外経済協力に関する重要事項について、機動的、実質的な審議を行うことになりました(注5)。また、同月、外務大臣を本部長とする「国際協力企画立案本部」が外務省に設置され、外交政策全体の戦略的方向性や「海外経済協力会議」の審議を踏まえ、地域ごとの援助方針、分野・課題ごとの取り進め方などを議論し、外交政策全体の中での位置付けを常に確認しながら国際協力を進めることとしています。
  「海外経済協力会議」、「国際協力企画立案本部」において審議される国際協力の基本戦略を踏まえて、2007年、外務省は「平成19年度国際協力重点方針・地域別重点課題」(注6)を策定し、外交政策を踏まえ、政府開発援助の資源を的確に配分し、基本戦略を個別の援助の実施に反映させる取組を行っています。このように、政策の企画・立案から案件の実施までの整合的な取組は、国際協力局の創設により、二国間援助のみならず国際機関を通じた援助の実施にも反映しやすくなりました。

図表I-12 政府開発援助改革、外務省機構改革の考え方

図表I-12 政府開発援助改革、外務省機構改革の考え方


図表I-13 海外経済協力会議の開催実績(2007年11月1日現在)

図表I-13 海外経済協力会議の開催実績(2007年11月1日現在)


(2) 「国際協力に関する有識者会議」
  国際協力に関する政策に、国際協力に専門的知見・経験を有する国民の声を反映させることは、国民の理解の下、戦略性と効率性を重視した国際協力を促進するために重要です。そのために、2007年3月、外務大臣の諮問により、渡辺利夫拓殖大学学長を議長とする「国際協力に関する有識者会議」を立ち上げ(注7)、国際協力の基本政策について、幅広い視点からの討議を行っています。外務大臣による諮問事項は、(1)国際協力政策の基本的な考え方、(2)国際協力への国民参加(国際協力を担う人材育成や教育等)、(3)政府開発援助案件の形成と実施上の課題(効率化・迅速化、官民連携、NGOとの連携等)─の3点で、2007年内をめどに中間報告が行われる予定です(注8)

図表I-14 国際協力に関する有識者会議の開催実績(2007年11月13日現在)

図表I-14 国際協力に関する有識者会議の開催実績(2007年11月13日現在)


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