日本の政府開発援助は、50年以上の経験を積み重ねながら、変化する国際社会に対して最もふさわしい国際協力の在り方を模索してきた結果、現在の姿があります。そのような歴史の中で形づくられてきた日本の開発援助の考え方(理念)は、開発途上国の国民の力を引き出し、歴史や経験に裏付けられた日本の知見や技術を伝えることにより、開発途上国の経済社会の発展に貢献することです。また、開発途上国の民主化定着・市場経済化を支援することも重要です。
「自助努力」とは、開発途上国自身が主体的に自国の将来に責任を負い、また、開発途上国の国民が自らの手により自国の発展に努めることです。日本の政府開発援助は、この途上国自身の自助努力に対する支援が、持続的な経済成長を実現するために不可欠であるとの考えに立ち、個々の援助案件(プロジェクト)の実施に際し、支援終了後も開発途上国の国民が自らの手により、事業を持続・発展的に実施していくことが可能な協力を行っています。
例えば、後述する法整備支援の実施にあたっては、日本の法制度をそのまま移植するのではなく、途上国政府に様々な法体系の選択肢を提示し、その中から最もふさわしいものを共に検討するとの方法をとっています。また、日本から派遣された専門家、および国内でプロジェクトを支援する学識経験者は、開発途上国の法務関係者自身により当該国の社会状況に即した法律が整備され、運用できるように、起草や立法化作業を支援します。この共同作業の過程を通じて、相手国人材はその国の法律の専門家としての能力を向上させ、重要な役割を担うようになります。
また、開発途上国の一国を全体として見たときに、日本の支援終了後も、途上国自らが、国際経済の中で貿易・投資の利益を獲得しながら、経済成長を持続することが可能である支援を行うことが重要です。
こうした自助努力を支える要素として、人づくり、法制度整備、経済社会基盤の整備(教育、保健・衛生などの社会インフラや運輸・通信、エネルギーなどの経済インフラの整備)が重要です。人づくりは、途上国が国家建設と経済開発を行っていく上で欠くことのできない自国の人材を育てるものであり、法制度整備および経済社会基盤(インフラ)の整備は開発途上国の発展の基礎であり、日本はそれらへの支援を重視しています。