3. 日本の「美しい星50」提案

  このように、気候変動に対して速やかな行動が求められている状況を踏まえ、2007年5月、安倍晋三総理大臣(当時)は「美しい星50」を発表しました。この中で、日本は、世界全体で2050年までに温室効果ガスの排出量を50%削減するという長期目標を提案すると同時に、京都議定書の第一約束期間が終了する2013年以降の枠組み構築に向けた3原則(注8)を提唱しました。また、これらの原則を実現していくため、日本は、温室効果ガスの排出の抑制と経済成長を両立させようとする志の高い開発途上国を広く支援することを表明しました。そして、この支援は、緩和、適応、クリーンエネルギーの利用促進など、日本の技術と経験をいかし、途上国の事情にきめ細かく配慮しながら行っていくこと、こういった支援のための新しい「資金メカニズム」を構築していくことを表明しました。この「資金メカニズム」については、単に従来行っている途上国支援の資金を振り向けるものではなく、ある程度の長期で担当規模のものとすることを検討しており、他の先進国や国際機関にも同調を呼びかけ、国際的に協調して行う方針です。
  南米大陸に位置しカリブ海に面するガイアナのジャグデオ大統領は、2007年6月に来日し、安倍総理大臣(当時)との会談において、ガイアナが直面する気候変動による海面上昇や異常気象による洪水の問題の深刻さを述べた上で、気候変動対策分野における日本のリーダーシップを高く評価しました。そして、両国は、日・ガイアナ環境・気候変動共同声明を発出し、この分野での協力を強化していくことを発表しました。ガイアナは、人口の9割が海抜0メートル以下の土地に居住しているといわれ、気候変動による海面上昇や洪水で多大な被害が発生するおそれがあります。その他のカリブ諸国や太平洋の島嶼国、アフリカの国々のように、気候変動にぜい弱な開発途上国は、同様の懸念を有しています。日本の経験や技術をいかして気候変動分野における途上国支援を強化するとの提案に対し、開発途上国からは、強い期待感が示されています。

囲み 1 クリーン開発メカニズム(CDM)への政府開発援助の活用について


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