私たちの生活や経済活動はエネルギーによって支えられています。日本のエネルギー自給率は水力等わずか4%であり、原子力を含めても18%にすぎず、その他はすべて海外からの輸入に依存しています。日本はエネルギー源の多様化を図っていますが、石油依存度は約5割に達し(注18)、石油の輸入先の約9割が中東(注19)からのものです。最近は、新興経済国の経済成長が世界のエネルギー市況に影響を与えています。中国、インドの急速な成長と、エネルギー利用効率が相対的に低い産業構造のため、両国のエネルギー需要は急速に増加しており、2030年には、中国とインドの石油需要量の合計は、同年におけるサウジアラビアとイラン(注20)の原油生産量の合計に相当する量になると見込まれています(注21)。このような中、日本は長期的な観点から、資源・エネルギーの安定的確保を図っていくことが必要です。そのためには、JBICの国際金融等業務や日本貿易保険(NEXI (注22))の貿易保険(注23)に加え、政府開発援助も活用しつつ、資源国の政治的安定、市場の透明性の向上、投資環境の整備、資源輸送路の安全確保などに向けた幅広い施策を進めるとともに、資源国との長期にわたる安定的な二国間関係を構築することが重要です。
日本が輸入に依存しているのは、石油、石炭、天然ガス、ウラン等のエネルギー資源だけではありません。レアメタル(注24)をはじめとする非鉄金属は、日本の国際競争力を支える自動車、IT製品などの高付加価値・高機能製品の製造に使用され、国民の消費生活にも重要な不可欠な資源ですが、日本はその多くを輸入に頼っています。レアメタルは、少数の資源国(中国、ロシア、南アフリカ共和国、チリ等)に偏在していることが多く、突発的な理由(事故・自然災害、鉱山における企業ストライキ等)による供給減や投機による価格高騰などその安定的な供給の確保は困難です。最近は、レアメタル産出国である中国の経済成長により、中国国内需要への優先的振分けや輸出抑制策により国際需給がひっ迫することも多く、レアメタルを巡る国際環境は厳しさを増しています。また、特にアフリカについては、中国が資源外交を活発化しています。このような中、日本企業が直接投資を通じてレアメタルなどの重要資源に係る海外権益を取得し、これらの長期的かつ安定的な調達先を確保することは、日本にとって極めて重要であり、このような企業活動を政府開発援助を活用して支援することが、今後、ますます重要となるものと考えられます。具体的には、港湾・道路等インフラ整備や鉱山周辺住民に対する支援を通じて日本企業の開発途上国における活動環境を整備することなどが考えられます。このような支援の具体例は前述(注25)のとおりです。また、資源有望国における鉱業投資の促進を図るために、資源エネルギー省などの開発途上国の関係当局の能力強化(地質調査能力の強化を含む)を政府開発援助により支援することも重要です。