国際NGOワールド・ビジョン・ジャパンの親善大使をされている酒井美紀さんに、お話を伺いました
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■国際協力にかかわることになったきっかけは、フィリピンに行かれたことと伺いました。
■「テレビ番組の取材で、フィリピンのスラム地区に行きました。頭では分かっていたつもりだったんですが、想像を超える貧困の現実に衝撃を受けてしまって。そこで、ある女の子に出会って、彼女を通じて自分を見つめ直すきっかけになったんですね。そして、生活の中でできることはないか探しているうちに、ワールド・ビジョン・ジャパン(以下、WVJ)のチャイルド・スポンサー(注1)になろうと思ったんです」
■いわゆる「里親」とは違って、チャイルド・スポンサーは子どもとその環境も含めて支援を行う仕組みということなのでしょうか。
■「そうですね。私は子どもを取り巻く環境も含めて、もう少し広い範囲で現実を改善できないかなと考えました。子ども一人が助かっても、その周りの家族や地域、そういった環境が変わらないと、かえって良くないんじゃないかと思ったんです。それで、できることを探しているうちに、仕事の関係で司会を務めたチャリティ・コンサートなどを通じて、WVJにかかわることになりました」
■もともと、ボランティアなどにご関心をお持ちだったのでしょうか。
■「小さいころ、ガールスカウトをやっていました。それに、小学校の課外活動で養護施設や老人ホームを訪問した経験から、自分の生活の中に「お互いに助け合う」という考えが自然に入っていたという感じです。ですので、親善大使のお話があったときも、それほどためらうことなく、受けさせていただきました」
■親善大使になられて、先日はインドを訪問されたそうですね。WVJのプログラムと日本の政府開発援助事業を視察されたと伺っています。
■「日本が円借款による支援を行っているデリーメトロの事業と技術協力による養蚕プロジェクト事業などを視察しました。デリーメトロには実際に乗ってみましたが、いろいろなところで利用者が使いやすいような工夫がしてあるんですね。例えば、つり革がバネ仕掛けになっていて、私のように体が小さい人にも使いやすいので、日本でも取り入れてくれないかなと思いました。それに、インドの方が着るサリーが、エスカレーターで引っかからないような工夫がされていたり、仕事の現場では作業員の安全確保のためのヘルメットや安全靴の着用など、インドの工事現場では細かく行き届いていない安全面の徹底を教えていました。また、養蚕プロジェクトでは、日本では技術は高いけれども今では下火になっている産業が、現地に伝わっていました。日本の技術だと、一つの蚕の繭からとれる糸が長くて、質が良いんですよね」
■とても楽しそうにお話されて、現地の様子が伝わってくるようです。
■「すごく感動したんですよ(笑)。大きな箱物の事業でも、いろいろな細かい工夫がされていることを知りました。それに、現地の人たちの顔が、「自分たちは発展していっているんだぞ」って輝いているんです。現地での視察では、貧困層の人々も少しずつですが生活が改善されていることに喜びを感じ、「生きる自信がついた」と言っていました。やっぱり箱物だけ、NGOだけというのではなくて、全体で連携してやっていくことが重要なんだと思いました。いろいろと調整が難しいことも理解しますけど、大事なのは「いのち」なんだから・・・」
■最後に、今後、どういった活動をしたいとお考えですか。
■「やっぱり、伝えていくことですね。一人ひとりの生活の中で、ちょっと気にかけるだけで、国際協力につながっていく。最近ではエコロジーも流行ですし、誰でも生活に負担をかけないレベルでの協力ができるということを伝えたいです。みんなの力が合わされば大きな力になるんだって。ほかには、ファンドレイジング(注2)を生活の中に根付かせたいと考えています。自分のためにした行動が、後には自然のうちに人や環境のためになっている。多くの人々が、充実感・達成感を得られ、喜びを感じられる。そのような形があること、その方法を伝えていけたらと思っています」
■ありがとうございました。
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注1 : ワールド・ビジョンの支援枠組みの一つ。子どもたちが健やかに成長し、教育を受け、やがては地域社会が自立・発展できるように、子どもと交流しながら、地域に根ざした支援を行う。
注2 : 寄付金集めなどを通じた資金調達。