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2 フランス

(1)援助政策等
 フランスは、その外交政策において開発援助重視の姿勢を明確に打ち出しており、伝統的にアフリカ開発問題を重視している。
 ODA実績については、2004年のODA総額は84億7,256万ドルであり、前年の72億5,309万ドルより増加したが、対GNI比は前年同様0.41%にとどまった。政府は、2007年にODAの対GNI比0.5%を、2012年に0.7%を達成する目標を公式に掲げている。また、近年フランスは、EUを初めとする多国間援助に力を入れており、ODA総額の約3割(2004年は34%)を国際機関への拠出にあてている。
 地域別に見ると、2004年の地域別二国間ODAの54%はサブ・サハラ・アフリカに向けられている。なお、サブ・サハラ・アフリカ以外では、中東・北アフリカ(15.8%)の占める割合が大きい。また、フランスの援助政策において「優先連帯地域」に指定されている54か国のうち、44か国がアフリカの国である。
 セクター別では、債務救済を別とすれば、経済インフラ、教育、医療、水供給・衛生等、社会セクターに対する関心が高い。
 個別の政策面では、フランスは、エイズを含む感染症対策に積極的な姿勢を示しており、2004年には、世界エイズ・結核・マラリア対策基金に1億ユーロを拠出した。さらに、安定的な開発資金を確保するとの観点から、シラク大統領は、開発のための国際課税を含む「革新的資金調達メカニズム」の創設を提唱した。この一環として、フランスは、航空券連帯税として航空券に少額の料金上乗せを行い、これにより得られた資金を途上国の感染症対策に充てるパイロット・プロジェクトを 2006年7月より実施している。
 また、水を含む環境分野の取組も重視されており、ニジェール川流域機構やコンゴ川流域森林パートナーシップへのコミットメントに加え、2005年4月には、アフリカ地方給水・浄化国際会議をパリで開催し、今後のアフリカへの水分野のODAを倍増する旨発表した。

(2)実施体制
 1998年のODA制度改革により旧協力省が外務省に吸収された後、現在、フランスのODAにおいては、外務省(国際協力・開発総局)、経済・財政・産業省及び実施機関のフランス開発庁(AFD:Agence françise de développement)が主要なアクターとして機能している。
 外務省国際協力・開発総局(DGCID:Direction générale de la coopération internationale et du développement)は、外務大臣の委任を受ける形で、対外協力・開発・仏語圏担当大臣が総括しており、「優先連帯基金」(上記「優先連帯地域」に対する無償資金協力)、技術協力等に加え、開発途上国のみならず先進国との文化・科学協力や仏語振興も手がけている。
 経済・財政・産業省では、国庫・経済政策総局がODAを担当しており、タイド性借款、国際金融機関への拠出、債務救済等を担当している。また、同総局がパリ・クラブの事務局を務めている。
 AFDは1998年の改革により、フランスODAの「主要実施機関」として位置づけられることとなり、現在、開発銀行と援助実施機関の二重の役割を担っている。日常業務においては、外務省及び経済財政産業省との関係が特に緊密であり、両省は、AFDの最高意思決定機関である監査役会に、自省幹部を送ることでAFDの業務をコントロールしている。また、監査役会の承認に先立つ段階でも、外務省、経済・財政・産業省、AFDの3者の担当者レベルで頻繁に協議が行われている。在外事務所に関しては、サブ・サハラ・アフリカ24事務所、地中海・中東(北アフリカを含む)6事務所、アジア6事務所、カリブ2事務所、海外県領土9事務所の全47事務所がある。職員数については、本部採用が952名、現地採用が666名の計1,618名である。
 さらに、1998年の改革により、首相を長とし、関係閣僚により構成される「省庁間国際協力・開発委員会(CICID:Comité interministériel de la coopération internationale et du développement)」が創設され、省庁間にまたがる援助方針、国別・セクター戦略、優先連帯地域の選定等、省庁間の調整・一貫性を実現する場として機能している。
 他方、2004年のDAC対仏援助審査では、フランスの援助政策における行政機構の複雑さや一貫性の問題が指摘され、これを受けて、同年の新たな制度改革では、対外協力・開発・仏語圏担当大臣がフランスODA戦略策定における「主導役」として位置づけられることとなった。同時に、この改革では、外務省とAFDの業務分担の見直しも行われ、外務省の無償資金協力業務の一部(農村開発、保健・基礎教育、インフラ整備等)がAFDに移転されることとなった(外務省には、法治国家・ガバナンス、フランス語振興、文化協力、人材育成・高等教育等が残ることとなる)。
 NGOとの関係では、外務省国際協力・開発総局がNGOの提案するプロジェクトを審査し、そのコスト総額に対し50%を上限とし資金を供与するスキームがある。NGO向けの直接的な資金供与以外に、緊急援助、難民救助、優先連帯資金等を通じてNGOに資金が供与されている。また、NGO、組合等、国際協力に関わる様々な関係者との、広範にわたる協議のためのフォーラムとして、国際協力高等評議会(HCCI:Haut conseil de la coopération internationale)が存在している。

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