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[8]案件形成事業(国・課題別事業計画関係費)
1.事業の開始時期・経緯・目的
開始時期
1988年度に「援助効率促進事業」として開始。2004年度に案件形成関連の予算を「国・課題別計画策定経費」に統合するとともに制度の見直しを行った。
経緯・目的
JICAの独立行政法人化に伴って、JICAにおいてはより効率的な予算執行のため、従来の「援助効率促進費」を核に、援助の実施前段階における効果的な案件準備・計画策定に資するべく、案件形成、調査研究・分析等に関する経費を「国・課題別事業計画関係費」として再編した。
2003年8月に改定されたODA大綱においても、日本の援助政策と被援助国の開発戦略の調整を図り、開発途上国の開発戦略の中で日本の援助が十分生かされるようにすることが求められている。
そのような中で、主体的な案件形成の重要性は増しており、国際機関や他ドナー等とも連携を強化しつつ、重点課題・分野への集中的な投入を促進していくことが不可欠であり、被援助国の開発課題において、プロジェクト形成調査、企画調査員等の様々な案件形成の手法を有機的に連携させ、柔軟に組み合わせて活用することとしている。
2.事業の仕組み
概 要
日本のODA政策・戦略を踏まえ、また、開発途上国のニーズや複雑化・高度化する開発課題に的確に対応した協力事業を重点的かつ効果的に実施するため、援助の実施前段階において、主に以下の事業を行う。
(1)特定分野の開発の必要性が確認されているが要請がなされない、または要請案件の熟度が不十分な場合に、日本側から能動的に当該分野に関する調査及びデータの収集・分析やワークショップを行い、日本の協力の方向付けを行う(プロジェクト形成調査)。
(2)被援助国における開発重点分野に精通した調査員を現地に派遣し、相手国関係機関との連携の下、優良案件の発掘・形成や要請案件の調整・整理を行う(企画調査員)。
(3)要請案件の事前検討機能を強化するため、専門性を有する現地技術者を配置し、現地の専門技術情報や周辺情報の収集・分析を行う(在外専門調整員)。
審査・決定プロセス
日本の援助の重点協力課題・分野を対象に、対象国及び対象分野・課題の優先度、緊急度、効果、予算等の観点から総合的に検討を行い、案件形成事業の実施が必要とされる開発課題を特定する。
なお、案件形成を行う開発課題の特定にあたっての基本的な考え方は以下のとおり。
●新ODA中期政策等において援助案件の形成・選定では現地ODAタスクフォースの主導的役割がうたわれていることを踏まえ、現地ODAタスクフオースの意向を可能な限り尊重する。
●各被援助国に対する重点分野の中で、被援助国の開発計画・戦略や被援助国政府との政策協議の結果を踏まえて開発課題を整理・分析し、日本が協力案件の形成を行う必要がある開発課題を特定する。
●特定された開発課題に対し、技術協力のみならず、無償資金協力や円借款事業を視野に入れて、案件形成の段階から各援助手法の有機的な連携を図る。
決定後の案件実施の仕組み
JICAは、外務省と協議の上、案件形成事業を実施する開発課題を決定した後、具体的な目的、事業内容、実施期間等の実施計画を作成し、実施する。
3.最近の活動内容
概 要
2005年度は、88か国、307開発課題に対して案件形成事業を実施した。
地域別実績
2005年度の地域別実績は以下のとおり。

2005年度に各地域で実施した主要な事業は以下のとおり。
(1)アジア
農村開発、感染症対策等の基礎生活分野とともに、民間セクター開発や経済インフラ等投資促進や経済基盤整備に関する分野で多くの事業を実施した。
2004年12月のスマトラ沖大地震・インド洋津波、2005年10月のパキスタン地震の被災国であるインドネシア、スリランカ、パキスタンでは、本格的な復興に向けた協力案件の発掘・形成を行った。
(2)大洋州
域内共通の課題である環境(公害対策を含む)、保健医療分野での事業を中心に実施した。
(3)中南米
基礎生活分野では、教育、保健医療に加え、国内避難民や障害者等の社会的弱者支援に関する事業を中心に実施した。環境防災分野での事業も多い。域内リソースの有効活用を前提とした南南協力等の協力案件の形成も積極的に行っている。
(4)アフリカ
初等教育、保健医療等基礎的生活分野での事業を中心に実施した。スーダン、アンゴラ、ウガンダ等では、平和構築・復興支援に関する事業も行っている。
また、エチオピア、ガーナ、タンザニア、モザンビーク等ではPRSP(Poverty Reduction Strategy Paper:貧困削減戦略文書)や公共財政に関する情報収集を行い、援助協調への対応を図っている。
(5)中東
復興に取り組むアフガニスタン、イラク、パレスチナ支援に関する事業を中心に実施した。
(6)欧州
経済政策・民間セクター分野での事業を中心に実施した。