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(2)適正な手続きの確保
環境の保全及び社会面への影響を考慮しない開発は短期的には効果を上げることはあっても、中長期的には当該国の経済社会的発展を阻害する要因となり、日本が従来から取り組んできた持続可能な開発の考え方と相反します。ODA大綱の援助実施の原則においても、環境と開発を両立させることが明記されており、環境に適切に配慮することは開発途上国の持続的な開発に不可欠です。
そのため、実施機関においては環境ガイドラインを策定・活用し、援助を実施する際には事業実施主体側が自然環境への影響のみならず、自発的ではない住民移転や土地及び資源に関する先住民族などの諸権利などの社会面への影響に対する配慮がきちんとなされているかを確認しなくてはなりません。このような環境ガイドラインの策定・活用は、日本のODA事業が環境や地域社会に負の効果を及ぼすことをできる限り回避するよう努めているだけでなく、環境問題への配慮確認の透明性、予測可能性、アカウンタビリティーの確保も期待されています。
日本は、これまでも各種の環境社会配慮ガイドラインに沿って、開発途上国側の取組につき事前確認を行ってきていましたが、近年は、そうしたガイドラインの一層の充実化に努めています。有償資金協力については、有識者やNGOなどからの幅広い意見を聴取した上で、環境面に止まらず住民移転や先住民族・女性等社会的弱者への配慮などの社会配慮も含めた形で、「環境社会配慮確認のための国際協力銀行ガイドライン」を2002年4月に策定し、2003年10月より施行しています。技術協力に関しては、外部有識者・NGOなどから、幅広く外部の意見を求めた上で、2004年3月、「JICA環境社会配慮ガイドライン」を改定し、同年4月から施行しています。また、無償資金協力に関しても、JICA環境社会配慮ガイドラインを準用した「無償資金協力審査ガイドライン」(暫定版)を2004年8月に作成し、試行的に適用していましたが、この間に寄せられた意見等を踏まえ、ガイドラインを改定し、2006年4月から本格的に適用しています。
また、効果的・効率的なODAの実施のためには、資機材及びコンサルティング業務などに関し質や価格面において適正かつ効率的な調達が行われることが重要であり、その手続きの簡素化や迅速化を図るよう努めています。
今後とも、日本は、環境や社会面における影響に配慮しながら効果的・効率的にODAを実施していきます。
さらに、無償資金協力については、金融、開発経済、法律、会計の専門家及びNGO関係者から成る無償資金協力実施適正会議を開催し、無償資金協力の案件選定に関わるプロセスに第三者の視点を取り入れています。この会議では、無償資金協力事業のさらなる効率化、透明性を高めるために活発な議論を行っており、これらの議論から得られた指摘などを業務に反映させています。