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3.効果的実施のために必要な事項
(1)評価の充実
ODAをより効果的・効率的に実施するためには、その実施状況や効果を的確に把握し、必要に応じて改善することが重要です。また、納税者である国民に対してODAがどのように使われて、どのような効果があったのかを説明することも重要です。これらの目的を果たすため、外務省を含むODA関係各府省、及び実施機関であるJICA、JBICではモニタリングや評価を実施しています。
ODA評価は企画(Plan)→実施(Do)→チェック(Check)→反映(Act)のサイクル(PDCAサイクル)の中に位置づけられ、評価の結果はODA政策の策定及び実施の改善に資するよう担当部局にフィードバックされるとともに、被援助国の関係者に対しても伝達されます。また、政策策定や事業の改善に役立てるとともに、ホームページなどを通じて一般に公表され、国民に対する説明責任を果たす役割を担っています。
従来は個別プロジェクトを中心とした評価を実施していましたが、近年国別やセクター別の援助戦略が重視されていることを踏まえ、個別プロジェクトに加えて国別や重点課題別、セクターや援助手法別の援助を対象とした評価もあわせて実施しています。また、評価の公平性を確保するため、第三者による評価を行うなど外部の視点を入れるよう努めています。
(イ)政策レベル・プログラムレベル評価
国別や重点課題別といった政策レベル評価、及びセクターや援助手法別といったプログラムレベル評価については、ODAの政策策定を担う外務省が中心となって実施しています。
2005年度は、国別評価では次期国別援助計画策定を控えたカンボジア、ケニア、タンザニア、及び新規策定を控えたセネガルにおける日本の援助を検証しました。特に、日本の援助政策が開発途上国のニーズと整合しているか、援助政策の効果はあったのか、適切な実施プロセスによって援助が行われていたか、といった点を中心に評価を実施しました。例えば、タンザニアの国別評価では、日本が援助の重点として捉えている分野が概ね開発途上国のニーズと合致していることが確認されましたが、同時に、日本の優位性を踏まえて選択と集中を図った内容とすること、援助協調が進展している同国のような国については日本の援助協調に対する基本的方針を明確にすることなどが指摘されました。
重点課題別では、ODA大綱における重点課題である「貧困削減」及び「平和の構築」を対象として評価を実施しました。これらの評価においては、国際社会の取組との整合性、結果の有効性、プロセスの適切性などについて検証を行いました。その結果、貧困削減に関わる評価については、日本のODAが東アジア諸国の経済成長の基盤づくりに寄与した結果、貧困削減が進み、MDGs達成の軌道に乗せることに貢献した点が指摘されました。その上でそうした取組についての内外での広報を強化することや、被援助国の特定地域に集中して日本の援助手法間の連携を促進し、援助の相乗効果(プログラム化)を図ることを推進することの重要性が提起されました。また、平和構築については、専門知識と経験を持つ人材の育成と人材の適時な派遣が可能となるようなメカニズムを強化することなどが指摘されました。
セクター別評価では、NGOと合同でフィリピンにおける教育分野の援助を対象として評価を実施しました。また、ベトナムについては運輸インフラ、バングラデシュについては農業・農村開発及び災害対策を対象としてそれぞれ先方政府と合同で評価を実施しました。援助手法別評価では、草の根・人間の安全保障無償資金協力の評価及び、新しい援助形態である一般財政支援についての検証を行いました。
(ロ)プロジェクトレベル評価
個別プロジェクトの評価も効果的・効率的な援助実施のために、また国民への説明責任を果たすために重要であり、その充実を図っています。
円借款では、JBICがすべての事業について、事業の準備段階において「事前評価」を実施するとともに、完成後2年目に国際評価基準に基づいて、妥当性、効率性、有効性、インパクト、持続性の観点から外部評価者による「事後評価」をしています。さらに、これらの評価体制をより充実させるため、2004年度より、借款契約締結後5年目に事業計画の妥当性・有効性等を検証する「中間レビュー」と、事業完成後7年目に有効性・インパクト・持続性等を検証する「事後モニタリング」を実施しています。
2004年度の41件の円借款事業(中国「天生橋第一水力発電事業(1)~(4)」、タイ「バンコク上水道整備事業(4-2)(5)」、「バンコク上水道配水網改善事業」等)の事後評価により、多くの事業で当初想定されていた効果が発現しており、電力供給によって約5,202万人、安全な水の供給と生活・産業排水の処理によって約3,166万人、洪水制御により約267万人と多くの人々が利益を享受していることが明らかとなりました。また、2006年度には、タイド借款であるSTEPについて評価を実施の上、その結果を公表することを決定しました。これにより、開発途上国及び日本側の理解を促進し、さらなる制度改善に資するものと期待されます。
技術協力では、JICAが、プロジェクトの開始前、実施中、終了時、終了後の各段階での継続的な評価を実施し、過去の教訓の活用を推進しています。例えば、2005年度に開始されたスリランカにおける「トリンコマリー県住民参加型農業農村復興開発計画」では、特定テーマ評価「貧困削減/地域社会開発」において明らかになった教訓(関係者間の役割分担の明確化や相手国関係者の意欲・イニシアティブを高める取組の必要性)を生かし、事業のコンセプトや手法、それぞれの役割分担について、プロジェクト開始前に関係者間での情報共有を徹底しています。また、住民自身が主体的に作成するコミュニティ活動計画に基づいて事業を実施し、開発の担い手である住民組織の積極的かつ継続的な参加を促すような対応が取られています。
無償資金協力については、2005年度より外務省がプロジェクトの事後評価を実施し、施設や機材の活用状況、効果の発現状況等について確認し、それぞれの事業の課題や問題点を抽出しました。事業内容の適切性や効果の発現状況について概ね肯定的な評価がなされた一方、一部の案件については改善の余地があることが判明しました。今年度の評価に際して得られた教訓は、今後新規案件の形成及び実施に反映していきます。今年度は完了後から3~5年を経過した10億円以上の案件52件を対象に行いましたが、将来的には全ての無償資金協力案件について実施することを目指しており、また、第三者の参加を得て評価の充実を図る予定です。
また、一定の供与額を超える有償資金協力・無償資金協力については、「行政機関が行う政策の評価に関する法律(政策評価法)」に基づき外務省自身による評価を行っています。

一般財政支援・評価の現地調査の様子(タンザニア)