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(3)不正、腐敗の防止
日本のODAは、被援助国の経済社会開発や福祉の向上を目的としており、かつ、国民の税金などを原資としていることから、援助によって供与された資金が不正に使用されることは絶対に避けなければなりません。そのため、政府及び実施機関では調達などの手続きについて透明化・簡素化を図っています。
有償資金協力については、案件の選定段階において、円借款の候補案件リスト(ロングリスト)の策定、公表を行っており、これまでベトナム、インドネシアなど6か国について策定、公表されています。同リストは複数年にわたる候補案件のリストであり、リストへの掲載をもって円借款の供与を何ら意味するものではありませんが、作成後は原則としてリストに掲載された案件から年度ごとに正式要請を受け、案件を精査の上供与されることになります。リストの作成・公表により、中長期的観点から円借款案件をより効果的・効率的に発掘・形成することが可能となり、他の援助国・国際機関との連携が促進されることが期待されます。
ODA案件の調達段階においては、これまでも、無償資金協力、有償資金協力については、JICA、JBICの調達ガイドラインに従って原則開発途上国側が入札を行い、その結果をJICA、JBICが確認し、受注企業名のみならず、契約金額も公表するなど、透明性を確保する措置が取られてきました。技術協力については、JICAが調達に係る規定にのっとり、事業実施のための資機材・サービスなどの調達をしています。また、無償資金協力、有償資金協力、技術協力とも、入札事業実施において不正が行われた場合は、不正を行った業者を一定期間ODA事業の入札・契約から排除する仕組みが整えられています。
また、監査に関しては、外部監査の拡充、抜き打ち監査の実施及びそれらの提言による改善措置を講じるための取組に関し充実を図ってきています。
外部監査の拡充については、有償資金協力について、一部の国で実施していた円借款調達手続きの外部専門家によるレビューの対象国を順次拡大しています。無償資金協力では、300万円以上(従来は2,000万円以上)の草の根・人間の安全保障無償資金協力案件について外部監査を原則義務づけ、順次実施しています。技術協力についても、JICAにおいて会計監査による監査として、外部監査を実施しています。
抜き打ち監査の実施に関しては、有償資金協力について、原則として2002年度以降政府間で合意がなされた案件を対象にサンプリングによる監査を導入しています。また、無償資金協力については、2004年度から契約認証業務が審査基準に準拠して実施されているかどうかについて、抜き打ちの監査を導入しています。技術協力については、サンプリングによる内部監査の一部を抜き打ちで実施しています。
改善措置を講じるためのシステム整備に関しては、有償資金協力及び技術協力について、それぞれ実施機関の関係部局が監査結果を踏まえてフォローアップを行う仕組みを拡充しています。
2004年度には、日本のコンサルタントがJICA等より受託した事業の一部現地再委託契約に関する不正経理が発覚しました。この対応として、JICAは同コンサルタントを一定期間、ODA事業の入札・契約から除外するとともに、契約確認方法の見直し、第三者機関による抽出検査の新規導入等を中心とする再発防止策を2006年1月に講じました。また、JBICにおいては、再委託契約についてサンプリング調査等の導入によって、清算時のチェックをさらに強化しています。
日本としては、今後とも、不正に対する取組を一層強化していきます。