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6.中南米
日本の中南米に対する2005年の二国間ODAは、約4億1,502万ドルで、二国間ODA全体に占める割合は4.0%です。
中南米地域は、地理的に日本とは離れていますが、日本人移住者とその子孫である日系人を架け橋に、伝統的に友好的な関係を築いている地域です。また、この地域は巨大な人口とASEANの2.5倍の経済規模を有する巨大な市場であるとともに、豊富な天然資源(鉄鉱・銅鉱・原油・天然ガス)、食糧生産能力(食肉・大豆等)等を擁し、日本をはじめとするアジア経済圏の繁栄を支える戦略的に重要な地域です。さらに、近年中南米地域に活発に進展している地域統合(中米統合機構(SICA:Sistema de la Integracion Centroamericana)、南米南部共同市場(MERCOSUR)(注1)、カリブ共同体(CARICOM)(注2)、アンデス共同体(CAN:Comunidad Andina))により、同地域の発言力強化と経済活動活発化の動きが顕著になっています。アメリカや欧州連合(EU:European Union)、中国などが経済関係強化に向けて、同地域との経済関係構築に積極的な姿勢を打ち出すなど、域外国等との間でダイナミックな動きを見せています。
このような状況下において、日本は2004年9月に小泉総理大臣(当時)がブラジル、メキシコを訪問した際に「日・中南米新パートナーシップ構想」を表明したほか、2005年8月に実施された日本・中米首脳会談では、「東京宣言」、「行動計画」が採択されました。また、カリブ地域においては、21世紀における「日カリコム協力のための新たな枠組み」が採択され、ほぼ毎年、日カリコム事務レベル協議が開催されています(2006年2月に第11回協議を開催)。このような取組を通じ、中南米・カリブ地域の安定的経済発展を目指し、経済関係強化のための協力や、投資環境向上につながるインフラ統合に対する支援、広域に利益となる案件の形成を進めています。同時に地域の経済社会構造上の問題の解決に資する支援、貧困格差の是正等にも取り組んでいます。また、防災の観点や、地球規模の課題である環境問題への対処にも取り組む方針であり、ODAの効果的・効率的な運用の観点から他のドナーとの連携強化を進めつつ、南南協力をも活用し積極的に支援を実施していく考えです。
●経済関係強化のための協力
日本は、豊富な資源を有し、経済機会が拡大している同地域での日本企業の活動は日本の繁栄に不可欠であるとの考えから、ビジネス環境改善やインフラ整備等を支援していく考えです。
特に、2005年4月には日本・メキシコ経済連携協定が発効し、本協定に基づき、ビジネス環境整備委員会を開催したほか、裾野産業の整備、中小企業支援といった分野で協力を行っています。
●中南米のインフラ統合への協力
中南米地域においては、同地域の地域統合イニシアティブの一つであるプエブラ・パナマ計画(中米)、および南米インフラ統合計画(IIRSA:Intiative for the Integration of Regional Infrastructure in South America)が進展しており、これらのイニシアティブに対して日本としても協力しています。特に、プエブラ・パナマ計画においては、物流の障害となっている道路・橋梁整備計画に対し支援を行う方針です。具体的には、2005年度には「ラス・オルミガス橋掛け替え案件(ホンジュラス)」を実施し、また2006年度案件としてホンジュラス・エルサルバドルの国境をまたぐ道路・橋梁整備計画である「日本・中米友好橋建設計画」の実施を決定したところです。また、南米インフラ統合計画においても、2005年度にパラグアイに対して「イグアス水力発電所建設計画」の円借款を供与するなど、積極的に支援を行いました。
●広域協力の推進
中南米地域においては、地域内に共通する開発課題が存在しています。日本としては、日本の援助資源の効果的・効率的な活用の観点からも、国境を越えて存在する共通の開発課題に対して、複数国に利益となる案件の形成を進めています。中米においては、「中米域内協力網構想」及び「中米特設地域研修」に基づき、中米地域で共通する風土病であるシャーガス病根絶に積極的に取り組んでおり、2002年にグアテマラで実施以降、2004年にはエルサルバドル、ホンジュラスと対象を拡大しています。またシャーガス病対策については、他のドナーとの連携を進め、米国やカナダ等の援助機関とともに支援を行っています。また、地域の基礎的学習能力向上のために、2003年にホンジュラスで実施し高い評価を得ている「算数指導力向上プロジェクト」も、グアテマラ、ニカラグア、エルサルバドル、ドミニカ共和国に対象の範囲を広げています。
カリブ共同体においては、水産分野にかかる専門家を派遣しているほか、2006年度には、カリブ共同体を相手機関とした、はじめての広域開発調査となる「カリブ地域における漁業・水産業に係る開発・監理マスタープラン開発調査」が開始される予定です。
さらにメルコスールや、アンデス共同体などとも、広域協力を行っています。メルコスールに対しては「メルコスール域内産品流通のための包装技術向上支援調査」や「メルコスール観光振興プロジェクト」を実施しました。さらにアンデス共同体への取組として、「アンデス防災医療マネージメント」研修を行い、域内各国から研修員を受け入れたほか、「アンデス共同体域内ネットワーク強化プログラム」を実施しており、同域内の技術移転や職業訓練の分野でのネットワーク構築に継続的に取り組んでいます。
●経済社会構造上の問題解決に資する支援、
貧困格差の是正への協力、地球規模問題への対処
日本は、貧困により教育を受けられない社会層や、また、中南米の健全な開発を脅かし、かつ政情不安を引き起こしかねない要因(青少年武装組織(マラス)や、元ゲリラ投降兵等)に対して、彼らを社会に取り込むべく、教育や職業訓練、さらに治安維持の分野において積極的に支援を実施しています。2005年にはコロンビアにおいて「投降兵士家族に対する職業訓練及び起業支援」の実施を決定しました。環境分野においてもアマゾンの熱帯雨林の保護や、水分野への支援を実施しています。
図表II―31 中南米における日本の援助実績

column II-12 ブラジル ~サンパウロ視覚障害者支援団体点訳機導入・施設改修計画~