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(2)アフガニスタン
アフガニスタンは、20年以上にわたる内戦により経済・社会インフラといった生活基盤そのものから、国家の枠組みを形成する基本システムが破壊された状態から、新しい国づくりをめざし努力を続けています。2001年の米国同時多発テロ以降、現在まで約5年の間、アフガニスタン政府と国際社会は協働してアフガニスタンの再生に取り組んで来ました。
この約5年のアフガニスタンの歩みに対し、日本は一貫して支援を継続してきました。日本の支援はアフガニスタンにおける和平・復興への取組が、世界全体の平和と安定、さらには、テロの根絶・防止にもつながるという考えに基づくものです。日本は2002年1月に「アフガニスタン復興支援国際会議(東京会議)」を主催して、国際社会全体から45億ドル以上の支援を確保し、日本としても向こう2年半で最大5億ドルの支援を表明しました。続く2004年3月のアフガニスタン国際会議(ベルリン会議)においても、日本は2006年3月までの2年間で、4億ドルの追加支援を表明しました。日本はアフガニスタンの復興に対し、積極的な支援を展開してきており、2006年1月までに10億ドル以上の支援をすでに実施済みであり、今後とも支援を継続していく考えです。
(イ) アフガニスタンに対する支援
日本のアフガニスタン支援は、2002年に川口外務大臣(当時)が提唱した「平和の定着」構想に基づき、政治プロセス・ガバナンス、治安の維持、復興の3つの柱から成り立っています(「平和の定着」構想については図表I―18を参照してください)。
政治プロセス・ガバナンスに対する支援については、国家の枠組みを形成する基本システムの回復を目的にしています。例えば、暫定政権への行政経費支援や、2005年の大統領選挙とそれに続く議会の選挙監視支援などがあげられます。また、治安の改善に対する支援については、元兵士の武装解除、動員解除、社会復帰(DDR:Disarmament, Demobilization and Reintegration)、地雷対策、警察支援など、平和の定着に必要な治安回復のための支援を行っています。特に、DDRプロセスについては、日本が主導的な立場で協力し、2005年7月7日には、約6万人の元兵士の武装解除・動員解除が、また2006年6月には動員解除された元兵士の社会復帰支援が終了しました。さらに、復興に対する支援として難民・避難民の再定住支援、農業・農村開発支援、教育支援、インフラ整備など様々な支援を行っています。
また、緒方貞子アフガニスタンに関する総理特別代表(当時)の2002年のアフガニスタン訪問を踏まえた提言に基づいて実施している地方総合開発支援(緒方イニシアティブ)は、地方復興支援のモデルを提示し、人道支援から復興・開発への継ぎ目のない支援策をうちだしたものです。インフラ部門ではカンダハール・カブール間、カンダハール・ヘラート間の幹線道路整備に続き、マザリシャリフ市の計画的な復興・開発を目指し、2005年度には「マザリシャリフ市内道路改修計画」の実施を決定しました。さらに、独立行政法人文化財研究所の協力を得て、世界遺産であるバーミヤン遺跡の保存・修復、活用などに関する計画の作成と石窟内の壁画、大仏破片、仏がんの保存・修復作業を進めています。
図表II―22 対アフガニスタン支援の内訳


木陰で勉強するマウラナ・ジャラルディン高校の生徒たち(写真提供:JICA)

(独)文化財研究所によるバーミヤン遺跡石窟における保存修復作業の様子
(ロ) 今後の支援
2006年1月に実施されたアフガニスタン復興会議(ロンドン会議)において、日本は、アフガニスタン国家開発戦略(ANDS:Afghanistan National Development Strategy)の履行のために当面4.5億ドルの追加支援とともに、新生アフガニスタンの新たな国づくりの努力に対する日本の方針を表明しました。また、2006年7月には、カルザイ大統領が来日した際に、日本は「平和の定着」に関する第2回東京会議を開催し、アフガニスタンの発展に向けて引き続き支援をしていくことを表明しました。現在のアフガニスタンは、緊急人道支援を要する段階から復旧・復興支援の段階を経て、本格的な開発支援の段階に移行しつつあります。しかし、その一方で、貧困問題は未だ存在し、また、DDRの対象とならない非合法武装集団が数多く残存しているなど治安問題もあり、持続的な開発を左右する大きな課題を抱えています。
このような問題解決への取組を支援するために、日本は、アフガニスタンの主要基盤産業であり、最大の雇用人数を抱える農業の活性化が極めて重要であるとの認識から、今後、アフガニスタン支援の柱として、農業、農村開発を実現するための基礎的インフラの強化、政府やコミュニティの能力向上を目指す総合的な取組である地方総合開発支援を実施していく考えです。さらに、中・長期的なアフガニスタンの発展のためには、中央アジア等周辺諸国との連携をも見据えた開発が必要です。その観点から、アフガニスタンとその周辺国を対象とした地域開発を重視していきます。

麻生大臣とカルザイ大統領の写真