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(3)スーダン
2005年4月、スーダン南北間の包括和平合意の成立を受け、同合意の着実な履行に対して幅広い国際的支援を得るため、アナン国連事務総長をはじめ、60以上の国(日本を含む)、地域、機関の代表が出席して、スーダン支援国会合がオスロで開催されました。このオスロ会合では、2005年から2007年の3年間の支援要請額約41億ドル(注1)に対して、各代表団より、これを上回る計45億ドルの支援表明がありました。これにより、スーダンの南北和平合意履行のための国際社会による一致した支援の強化という目的は達成されました。日本からは逢沢外務副大臣(当時)が政府代表として出席し、スーダンにおける平和の定着を支援するために当面1億ドルの支援を行うことを表明しました。2005年6月には政府調査団を現地に派遣し、二国間援助再開に向けた政府間対話を行うとともに、今後の具体的な支援策のあり方について本格的な検討を開始しました。
その結果も踏まえ、これまで国際機関を通じた支援を中心に実施してきています。具体的には、2005年7月に、食糧援助、食糧自給支援及び小児感染症予防支援からなる総額約12億円の無償資金協力、9月には、雨期明けに伴い本格化する南部への難民・国内避難民の帰還を支援するため総額約34億円の無償資金協力、11月に、暫定武装解除・動員解除・社会復帰プログラム(IDDRP:Interim Disarmament, Demobilization and Reintegration Programme)実施のための総額約7.6億円の紛争予防・平和構築無償資金協力、2006年2月には、紛争犠牲者に対する医療支援を順次決定しました。
こうした国際機関経由の支援に加え、二国間援助にも取り組んでいます。具体的には、「アフリカン・ビレッジ・イニシアティブ(AVI:African Village Initiative)」の考えを踏まえたコミュニティ支援の要素を含む緊急支援調査として、「ジュバ市内・近郊地域緊急生活基盤整備計画調査」を実施しています。これは、2006年1月から現地で本格調査を開始し、南部政府の首都であるジュバ市の都市計画の策定支援と、周辺コミュニティを含めた生活環境改善のための緊急事業を実施しています。このほか、JICAを通じて、ポスト紛争国における復興開発や、平和構築に関する基礎的な考え方を学ぶ機会を提供するとともに、今後、スーダンにおいて日本がODA事業を実施するにあたり必要な理解を促進することを目的とした、国際協力セミナーによる人材育成支援を実施しています。具体的には、国際協力セミナーを南北の行政官10名を対象として日本国内で2度実施したほか、各種分野の第三国研修をエチオピア、ケニア及びエジプトにおいて実施しました。
ダルフール問題(注2)に関して、日本は、同問題解決に向け、国連安全保障理事会の動向と歩調を合わせ、スーダン政府を含む関係者の具体的努力を引き続き働きかけています。さらに、人道支援の実施に加え、同問題解決のために主導的な役割を果たしているアフリカ連合(AU:African Union)の活動を支援しています。人道支援では、2004年に総額約2,100万ドルの支援を実施したのに続き、2005年に国内避難民・難民の帰還支援や、食糧援助として総額約750万ドルの支援を実施しました。また、ダルフール問題に関するAUの活動に対し、2005年3月に約200万ドルの支援を実施しました。さらに、2006年5月、小泉総理大臣(当時)がアフリカ訪問中に行ったAU本部での政策演説において、ダルフール和平交渉の早期妥結を呼びかけるとともに、AUの活動を支援するために約870万ドルの追加的な緊急支援を行うこととし、さらに1,000万ドル程度の追加的な人道支援も行うと表明しました。
2005年4月に開催されたアジア・アフリカ首脳会議において、小泉総理大臣(当時)はアフリカ支援全般の強化とともに平和構築支援を打ち出しました。スーダン支援は、日本が対アフリカ政策の重要な柱として強調する「平和の定着」に対する支援の典型例であり、その成功は今後のモデルケースとなり得ます。
図表II―23 日本のスーダンに対する平和の定着のための支援(2006年10月現在)


アジア・アフリカ首脳会議の全体会合で演説する小泉総理(写真提供:内閣広報室)