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第6節 海の安全確保
●海の安全確保へのアジア沿岸諸国への支援
航空機などの高速の輸送手段が発達した現在でも、原油や石炭、自動車、貨物などを輸送する場合、一度に大量の物資を比較的安価に輸送できる大型船舶が主に使われています。こうしたことから、国際航路における船舶の安全な航行は、世界貿易にとって重要な意義があります。また、輸出入の約99.7%(2003年)を海上輸送に依存している日本にとっても、船舶の安全確保は重点的に取り組まなければならない課題です。
海の安全を確保するには沿岸国の協力が不可欠ですが、開発途上国においてはこうした取組が不十分であるため、日本はODAを通じて、船舶の航行区域沿岸の開発途上国における海の安全対策強化に取り組んでいます。
船舶の座礁や衝突などの海難事故を未然に防止し、海上輸送を担う船舶の安全を確保するためには、正確な海図(海の地図)の整備や、灯台、灯浮標、無線標識局などの航路標識を整備することが不可欠です。また、船員の人命や財産を保護し、海の治安を守るためには、海賊や海上テロ、銃器や薬物の密輸などの海上犯罪の予防や取締りを実施するための体制整備が必要です。さらに、海難事故が発生した場合の海難救助体制や流出油防除体制が整備されていることも、安全な航行に欠かせません。
しかしながら、資金や技術、人材の不足などにより、開発途上国における安全航行対策は不十分な場合が少なくありません。このため、日本はアジアの沿岸諸国に対して海図や航路標識整備のための技術協力や機材供与、海上保安機関設立のための支援などを行い、海の安全の確保に寄与してきました。また、テロや海賊などの海上犯罪は、沿岸地域の貧困問題が要因となっている場合もあることから、日本は沿岸部の農村開発など貧困削減のための支援を通じて、沿岸部の安定的発展と周辺海域の安全航行に貢献しています。
図表I―14 日本の海運量の推移
