column II-9 エリトリア除隊兵士の社会復帰のための基礎訓練プロジェクト
東アフリカに位置するエリトリアは、エチオピアとの約30年間の独立戦争を経て1993年に独立したアフリカで一番若い国です。独立後も1998年から3年間、エチオピアとの国境紛争を経験しました。その結果、エリトリア国内での兵士の数は、全人口430万人のうち約30万人で、うち女性は約10万人です。
エリトリアの発展のためには、兵士の除隊とスムーズな社会復帰が大切であり、日本は、2000年12月のエチオピアとの和平合意を受け、食糧援助、基礎生活分野やインフラ整備の協力とならび、兵士の除隊や社会復帰を支援してきました。例えば世界銀行と協力して、兵士の国家除隊・社会復帰プログラムの支援を行っています。除隊プロセスは2002年に始まり、2005年6月時点ですでに合計約10万人の除隊が完了しました。
除隊兵士が着実に社会復帰するためには、その兵士への職業訓練が急務となっています。特に若い除隊兵士は労働の経験がなく、教育も十分に受けていない者が多いため、次の職業を探すことが困難です。日本が世界銀行などと協力して行っている「除隊兵士の社会復帰のための基礎訓練プロジェクト」では、合計157名の元兵士が職業訓練を受けましたが、そのコースの一例をご紹介します。
●美容師養成コース
JICAは、日本のプロジェクト実施機関として、首都アスマラ市内で女性を中心とした雇用動向や就職状況等に関する調査を行いました。その結果、美容師業は市場ニーズが拡大中で、就職・起業の可能性が高いことがわかりました。また、美容師を養成する訓練校が、市内に2校あり、どちらもプロジェクトで期待される職業訓練コースを実施する能力と意欲を持っていることや、卒業生の就職率が高いことがわかりました。そこで、このプロジェクトでは上記の2つの訓練校と契約することにしました。
これらの訓練校では、日本からは美容師研修講師が派遣され、3か月間の訓練を実施しました。コース終了3か月後の就職調査では、7割以上の卒業生が関連する職に就くか、自分で起業し、そのほとんどが満足しています。今後は、こうした職業訓練コースから得られた経験を活かし、生徒の募集や選考方法、カリキュラムの作成等、訓練立ち上げに関するノウハウがプロジェクトの関係者に蓄積され、より一層有益な訓練が実施されることに期待が寄せられています。
このように、除隊した元兵士の一日も早い社会復帰のため、地道な努力が日々続けられています。

美容師養成コースの訓練風景(写真提供:JICA)

(写真提供:JICA)