column II-2 国民の中に広がったアフガニスタン女性支援 ~アフガニスタン指導的女性教育者のための本邦研修~
四半世紀にも及ぶ戦乱によって教育システムが壊滅的なダメージを受けたアフガニスタンでは、教育の男女格差が深刻な問題となっています。これは1996年9月から5年に及んだタリバン政権下で女子の教育と就労が厳しく禁じられたためで、1999年当時の初等教育就学率は男子38%に対し女子3%と推定されています。
紛争終結後の2001年12月に発足したアフガニスタン暫定行政機構では、復興の課題の一つとして教育の必要性をあげました。また、2002年1月に日本が主催したアフガニスタン復興支援国際会議では、女子教育の重要性等が強調されました。さらに、同年4月にアフガニスタンのアブドゥール・ラスール・アミン教育大臣(当時)が訪日した際には、遠山敦子文部科学大臣(当時)から教育支援の一環として、女子教育振興のためのプロジェクトが提案されました。これは、タリバン政権下で教育を受ける機会を得られなかった女子に対して、アフガニスタンにおける女子教育の重要性とその支援に目を向けたことからはじまりました。
JICAの委託を受けた日本の五女子大学(お茶の水女子大学、津田塾大学、東京女子大学、奈良女子大学、日本女子大学)は、現地の学校で小中学校の校長といった指導的立場の女性教員たちを研修員として受け入れ、アフガニスタンの教育の発展や女子の就学率の向上に寄与してもらうための研修を約1ヶ月間実施しました。研修の参加者は、戦後日本の教育再建、教員養成制度、学校の組織や業務に関する講義や国公私立学校の視察や授業参観、障害児教育の現場などを視察しました。2002年から2005年までの4年間で、アフガニスタンから女性教員たち61名を受け入れました。女性教員たちは帰国後、日本での経験を同僚教師や生徒たちに伝え、授業や学校経営に生かそうと努力しています。
本研修は、アフガニスタンの女子教育支援を目的に五女子大学がコンソーシアムを結成して、JICAの研修事業に関わった新しい取組であるといえます。五女子大学では、4年間の研修でのべ約450人の教職員と学生が研修に携わりました。五女子大学では、明治以来独自に発展させてきた女子教育の経験を活かし、紛争後地域における女性の社会的、経済的問題、女子教育の課題について共に考え、アフガニスタンの女子教育の促進に貢献しようとしています。現在では、本研修をきっかけとして、様々な支援が各女子大学で生まれてきています。
アフガニスタンでは2004年1月には新憲法が制定され、国家が無償初等中等教育を男女の隔たりなく、全ての国民に提供すると明記されました。また、2006年1月にアフガニスタン政府から提示された国家開発戦略暫定版においては、女子教育振興が謳われています。一方、国際社会からの支援が進んだこともあり、女子の就学率も上がってきました。今後の更なるアフガニスタンの発展に、教育は重要な鍵となっていることからも、本研修を受けた女性教員たちの活躍が益々期待されるところです。

研修の合間に日本の文化を学ぶ女性教員たち(写真提供:奈良女子大学)

理科の授業で顕微鏡を覗き込む女学生たち。アフガニスタンのマリアン女学校にて。(写真提供:奈良女子大学)